プチ小説「こんにちは、ディケンズ先生73」

翌日に帰省を控えた日の夕方に小川と秋子はアユミとその夫を訪ねた。
「チケットは上手い具合に取れたわよ。帰りは別行動なので秋子のところで手配しているという
 ことだから、とりあえず、行きのチケットを渡しておくわ」
「どうも、お世話様。午後1時ね。それじゃあ、明日正午頃にこちらに来ることにするわ」
「そうね。ところで、12月28日はいいとして、あとの6日間はどうするの」
「ああ、それはですね、年末はぼくの実家、と言ってもほとんど外に出ていると思いますが、
 年始は秋子さんの実家で過ごそうと思っているんです。ぼくたちはふたりとも実家が関西なので
 こうして東京暮らしをしていると関西にいる親戚のところに行くことができなかった。それで
 今回はまとめて...」
「そう、それじゃあ、懐かしい思い出の場所に行くのも無理ねぇ」
「いや、そこはなんとかしたいと思っていて、年末に行こうと思っています。思い出の場所と
 言っても、ほとんど京都市内ですし元日アユミさんたちと一緒に行くところの中にも思い出の
 場所があるんですよ」
「元日の京都巡りは小川さんに任せてあるけど、人ごみの中を長時間歩くことやその逆に誰も
 いない寒風が吹き抜けるような寂しいところを訪れることは...」
「もちろん、楽しい時を過ごせるように計画しましたから。でも、何かご希望があればお伺い
 しますが」
「ああ、ぼくですか...。そうですね、この旅行ではスクワットは御法度ですが、トランポリンは
 許可ということなので、どこか広いところで...。そ、そうじゃなかったですね、でも、嵐山なんて
 どうですか」
「あなた、初詣なんだからやっぱり、阪急河原町駅から八坂神社、平安神宮に行くか、阪急西院駅
 から北野天満宮に行くか、京阪出町柳駅から下鴨神社に行くかだと思うのよ。あなたが嵐山に
 行きたいというのは、そこで大道芸のようなトランポリンでのトレーニングを見せたいから
 じゃないの。でも、嵐山では大道芸は御法度じゃないかしら。私たちは、ただ小川さんの案内で
 京都巡りをすれば良いと思うわ。そうよね」
「正月はお休みのところが多いので、今アユミさんがおっしゃったところということになります。
 でも、それだけではつまらないので...」
「それは、当日のお楽しみということにしましょう」