プチ小説「友人の下宿で27」
「みなさんお忙しい中お集りいただきありがとうございます。本日は高月さんがJ.S.バッハ の
音楽をみなさんにお聴きいただくと言われていますが、思い起こせば幾星霜この下宿で
みなさんとクラシック音楽を聴いて来たことでしょう。最近ネタ切れ気味であり、高月さんも
つまらない脱線を繰り返すようになったのですが、それもご愛嬌と堪えていただいて、
今後ともこの一時を一緒に楽しんでいただければ幸いです。それでは、高月さん張り切って
どうぞ」
「皆さんの声援それが生き甲斐、皆さんのあくびは厳しい叱咤と考え、日々精進して参りますので
今後ともよろしくお願いします。さて、本日はJ.S.バッハの音楽ということですが、以下バッハと
言いますが、以前にもお聴きいただいたことがありその時は独奏曲中心でした。本日は管弦楽作品を
お聴きいただくことにします。最初はやはりブランデンブルク協奏曲をお聴きいただきましょう。
有名な第1番と第5番それから私が好きな第4番をお聴きいただきます」
「次にお聴きいただくのは、管弦楽組曲です。私の好みを押し付けるのは良くないと思いますが、
なるほど第1番と第2番はすばらしいのですが、第3番、第4番は有名なG線上のアリア以外には
聴くところはないと思うのです。で本日はそこのところだけをお聴きいただくことにします」
「次にお聴きいただくのは「音楽の捧げもの」です。フリードリッヒ大王から与えられたテーマに
バッハがフーガ、トリオ・ソナタ、カノンの曲をつけたものです」
「最後は編曲ものをお聴きいただきましょう。レオポルド・ストコフスキーは映画「ファンタジア」や
「オーケストラの少女」に出演し一般の人々にもクラシック音楽を身近なものにしたことで
よく知られていますが、彼がッハの音楽を編曲したレコードが出されています。「ファンタジア」
でも演奏される、トッカータとフーガ ニ短調をお聴き下さい」
「百田どうだった」
「バッハの音楽は形式が厳格で情緒的なところがほとんど見られない。ロマンに溢れた作品を好む
ぼくもどちらかと言うと苦手だ、でも背筋を伸ばして襟を正してバッハの音楽を聴くのも...」
「百田、さっきから畳の上で丸太ん棒のようにゴロゴロ転がっていてそれはないだろう」
「......」