プチ小説「友人の下宿で30」

「みなさんお忙しい中お集りいただきありがとうございます。本日は、歌劇「トロヴァトーレ」をお聴きいただく
 とのことです。それでは高月さん、張り切ってどうぞ」
「ワーグナーと同年生まれのヴェルディは26のオペラを作曲していますが、中でも「椿姫」、「リゴレット」と
 この「トロヴァトーレ」はヴェルディの3大オペラと言われ上演の機会が多く、レコードもたくさん残されています。
 見せ場も多く、アンヴィル・コーラスそれに続くアズチェーナが歌う「炎は燃えて」、マンリーコが歌う「見よ、
 恐ろしい火を」などは一度聴いたら忘れない程の強い印象を残すのですが、筋が難しく華やかなシーンがなく場面が
 頻繁に変わるという批評もあったようです。それでも初演から人気は高く、今でも高い人気を誇っています。それでは
 簡単な筋をお話ししましょう。最初の場面ではルーナ伯爵の衛兵隊長により、ルーナ伯爵には弟がいたが、ジプシーの
 老婆の娘のアズチェーナに殺されたことが語られます。その頃宮廷ではイネスと登場した女官レオノーラがマンリーコ
 への切ない心の思いを歌います。場面が変わって今度はルーナ伯爵が現れ、レオノーラへの恋を独白します。その時
 遠くからマンリーコの歌「一人淋しく」が歌われ、再度登場したレオノーラはマンリーコと伯爵の区別がつかず、伯爵に
 「わが魂よ!」と言ってしまいます。レオノーラは間違いであることをマンリーコに告げるのですが、虚仮にされた
 伯爵はマンリーコに決闘を申し込みます。第2幕はジプシーの野営地の場面で始まります。アズチェーナは家に戻って来た
 マンリーコに自分が火の中に投げ入れて殺したのは自分の息子だったという話をします。マンリーコは、ルーナ伯爵と決闘
 したが、不思議な力に遮られてとどめをさせなかったと話します。そこに部下の使者が現れ、レオノーラはあなた(マン
 リーコ)が戦死したと思って修道院に入ったと伝えたので、マンリーコは修道院に向かいます。伯爵は修道院にやって
 来てレオノーラへの深い愛を歌い自分のものにしようとしますが、マンリーコが突然現れて中に割って入ったため敵意を抱く
 伯爵は一緒に三重唱を歌います。やがてマンリーコはレオノーラを連れ去り、残された伯爵は嫉妬にもだえて復習を誓い
 ます。第3幕はルーナ伯爵の陣営の場面で始まります。伯爵の部下が、「怪しい女を捕まえました」とアズチェーナを
 引き立てて来ます。部下は、この女は昔伯爵の弟を殺したと語ります。そしてマンリーコの母親であることをアズチェーナ
 は自ら語り、それを伯爵に聞かせます。一方マンリーコはレオノーラとの愛の喜びに酔っていましたが、アズチェーナが拘束
 されたことを知り、救出に向かいます。第4幕は伯爵の宮殿の中にある牢獄の場面。マンリーコはアズチェーナの救出に
 失敗し、二人とも牢獄に閉じ込められています。伯爵がアズチェーナとマンリーコを処刑すると家臣に命じたので、
 レオノーラは、自分の身を伯爵に捧げると約束し、マンリーコを解放してもらおうとします。レオノーラはマンリーコに
 「伯爵に許された」と言いますが、マンリーコは怪しんでレオノーラをなじってしまいます。レオノーラは牢に入る前に
 飲んだ毒で気を失いかけた時に、マンリーコに真実を告げます。レオノーラがマンリーコへの限りない愛を歌って絶命すると
 伯爵は怒りに燃えて、マンリーコをすぐに処刑するようにと告げます。マンリーコは、「おかあさん、さようなら」と引き
 立てられて行きますが、アズチェーナは伯爵に、「あれはお前の弟だ。かたきを討てたわ、かあさん」と言ってその場に
 倒れます」

「百田どうだった」
「うーん、この歌劇は、恋愛、三角関係、復讐、ジプシー音楽などたくさんの見所があるけれど、ぼくはこのセラフィン盤で
 アズチェーナを演じるフィオレンツァ・コッソットの歌唱に引かれるな」