プチ小説「登山者3」

「青ガレから一緒に下りられて楽しかったですよ。比良駅は通り道だから、トラックでお送りしますよ」
「ありがとうございます。この大きな麦わら帽子は後ろに積んでおいた方がいいですね。かなり年期が入っていますね」
「そうですね。でもこの時期は日よけにもなるし...」
「他にも何か理由があるんですか」
「ええ、この時期はミツバチが繁殖期で攻撃的になるから、これが必要なんですよ。ミツバチの天敵って何かご存知ですか」
「さあ...人間かな」
「熊なんです。ミツバチは繁殖期に蜜を取られないようにと、黒いものに対して攻撃的になるんです」
「そう言えば、この時期には数匹のハチが追いかけて来て、旋毛のあたりに寄って来ることがあります。ぼくは、黄色
 などの色に集まる習性があると思っていました。気を付けるようにします」

「さあ、着きました」
「ありがとう。またお会いできるといいですね」
「そうですね。比良はいつ登っても楽しい。農作業の合間に来るので、またお会いできるかもしれません」
軽トラックは、山川の前で方向を変えると比良駅から離れて行った。