プチ小説「青春の光16」

「は、橋本さん、どうされたのですか、警備室の中が万国旗と提灯で一杯じゃないですか」
「いやー、なに、私のしりあいに目出たいことがあって、それで思わずこういうことを
 してしまったんだ」
「それはなんですか」
「残念だが、言えない」
「ヒントを下さい」
「それも駄目だ」
「なら、ぼくは橋本さんに面白いことを言うのをやめます」
「うーむ、それは困るから、ヒントをあげよう。でもただではあげない。底ぬけ脱線ゲーム
 のようなゲームをしてもらって、勝ち抜いたら...」
「底ぬけ脱線ゲームを誰とやるのですか」
「もちろんぼくとさ。こういうこともあろうかと、ほら、発泡スチロールをボンドでつなぎ合わせて
 つくった丸太がある。ちゃんと茶色の絵の具で着色しているだろ。これをこういう風に天井からつり
 下げてある鎖につなげる。これでよし。で、田中君はそっちの端に馬乗りになって、ああ、それから
 中にストローを細かく刻んだものが入っている抱き枕を持ってくれ。私はこちらの端に乗るので、
 合図をしたら、どつきあいを始めるんだ」
「橋本さんは抱き枕を持たないのですか」
「私は日頃から鍛えているからそんなものは、いらないさ。それじゃー、田中君が金原二郎さんのように
 笛を吹いたら、ゲームスタートだよ」
「でもこの話がわかるのは、今、50才以上の人だと思うのですが...」
「まっ、いいから、始めたまえ、えーっ、まだ、笛も吹いていないのに」
「始めたまえと言われたので、始めました。じゃないと、笛を吹いてるうちに落とされたでしょう」
「仕方がない、それじゃーヒントを出そうと思うが、ジェスチャーじゃあ、だめかな。柳家金語楼さん
 仕込みの...」
「また、そうやって、ごまかそうとする。知ってますよ。近く橋本さんの友人が...」
「それから先は、頼むから」
「そうですか、尊敬する橋本さんが、両手を会わせ、両目に涙を浮かべて頼まれるんですから、今日は
 やめておきますが、そのうち」
「もちろん、その時が来たら田中君に彼を紹介するけれど、彼は恥ずかしがり屋だから、時期が来るのを
 待っていてくれ」
「......」