プチ小説「こんにちは、ディケンズ先生127」
小川、大川、相川の3人は、とりあえず名曲喫茶ヴィオロンでライブを行うとして3人の技術で可能なことを
考えてみた。
「相川さんのピアノだけでも立派なコンサートが成り立つでしょうが、3人で楽しんでするというのを主眼にする
なら私たちが相川さんの引き立て役というのはつまらないと思います。でも相川さんには第1部をまかせて自由に
演奏してもらうのがよいでしょう。アップライトピアノなのでダイナミックな表現が必要な曲は難しいかもしれ
ません。ショパンのワルツ、ノクターン、エチュード、プレリュード、マズルカなどは演奏可能だと思いますので、
その中から相川さんがお好きな曲を選択されて演奏されればよいと思います」
「私も、ヴィオロンに行ったことがありますので、どのようなピアノがどこに置かれているかは知っています。もし
解説が必要であれば、自分で解説してから演奏しますよ。で、いつまでに仕上げておけばよろしいですか」
「そうだなー、1年先くらいでお願いしときましょうか。と言いますのも、私たちのコンサートは3人ともが演奏して
こそ意味のあるものになります。ですからクラリネット初心者の小川さんが私が望む演奏をしてもらえるように
なってはじめて、演奏内容について考えることができるのです。とはいえいつまでもしないわけにはいかない。
2年後に妻のアユミが復帰するまでには2回はしておきたいと思うので、そのくらいがいいのじゃないでしょうか。
第2部の小川さんの伴奏は私がしますし、今のところ内容を決めていない第3部も私の演奏を中心に聴いていただく
つもりです」
「妻や子供はどうしますか」
「それは小川さんが決められればよいことですが、中年男性3人のコンサートよりも花のある女性が加わった方が
聴衆に楽しんでいただけるでしょうし、私たちのやる気も何百倍になることと思います。まあ1年あることです
から今から半年から10ヶ月間、小川さんは秋子さんの指導を受けられて、クラリネットの演奏技術の習得に専念
されればよいと思います。そうして10ヶ月たったら合奏の練習を始めますが、その時に演奏できるレベルに至って
いなくても構いません。秋子さんやもうすぐクラリネットのレッスンを始められる桃香ちゃんなんかが小川さんを
きっと助けてくれますよ。ほんとに親子3人でクラリネットを演奏できるなんて素敵だなぁ」
「そのためにはしっかり練習しないといけない。最初から助けを当てにしているようでは駄目だと思います。そうだなー、
これから日曜日の午後は忙しくなるだろうなぁ。この他に相川さんの講義も受けないといけないし、家族サービスも
怠ってはいけないし...。それにしても本当にそんな短期間で人前で演奏できるようになれるんだろうか」
「小川さん、そんなに心配しないでいいですよ。クラリネットの練習を始めることで、家族で共通の話題を語り合える
ようになるわいと考えればよいですよ。仕事第一ですし、もしも進捗状況が思わしくなければ、私も一緒に吹かせて
いただくつもりですので」
「私はピアノ以外はできませんが、大川さんが小川さんと一緒に吹かれる時には、伴奏を担当できるように練習して
おきましょう」
「ううっ、おふたりとも、ありがとうございます」