プチ小説「青春の光17」

「は、橋本さん、橋本さーん、橋本さーーーん」
「あっ、いかん」
「ふーっ、やっと追いついた。どうしたんです。最近、橋本さん、とても変ですよ」
「なーに、こんなことでつかまらないぞ」
「あーっ、また走ってどこかへ行ってしまった」

「あっ、いたいた、今度こそつかまえた。どうしたんです。こんどは橋本さんが逃げないように2人3脚をする時みたいに
 ぼくの足に括っておきます」
「どうせならタイヤにしてくれたらいいのに。10個までなら走って逃げる自信はあるんだ」
「なぜ、そうまでして橋本さんはぼくから逃げようとするのですか...」
「実は...」
「何ですか」
「やはり、駄目だ。言えない」

「橋本さん、最後の言葉、「駄目だ。言えない」と言われて、もうすぐ3時間になるのですが...」
「何か、喋れというのだな」
「そうです」
「それは無理だが、これならいいぞ」
「ジェスチャーですか。わかりました。さっそく始まったようだ。うーん、なになに、ハグしているので親しい人のようですね。
 掌を下にして腰の当たりに当てているということは、それはかなり小さい人を意味しているのかな。あっ、手を振っている。
 そうではなくてああ、なるほど、小さい頃からのという意味ですか。それで次は何をするのかな。お尻の上の辺りに手をやって
 放物線のようなものを描いているぞ。尾っぽのことかな。いや違う、もっと短くと言っているようなので、おだけでいいのかな。
 で、それは横に置いておいて、次は何か手前に引いているな、扉いやこれも短くと言っているから、とだな。次はどうもたこ焼きや
 お好み焼きを食べている様子だなボウルの中に袋から何かを移している。で、これのことと言っているから、粉かな、いや
 これも短くと言っているから、こだな。で、それを3つ並べて読めと言っているぞ。そうか、男だな。つまり幼い時からの
 付き合いの男性が何かするのかな。なにか弁当箱のような大きさの長方形を描いているぞ。ページをめくっているから、
 本のようだな。その人が本をどうするのかな。ああ、またそれは横に置いておいてと言っているぞ。おっ、今度は頭を指したぞ。
 頭にはさみを入れて中身を取り出す仕草をしているから、これは多分、脳のことをいっているんだな。うんうん、そのようだ。
 で、次が何か手首のスナップを効かせて振っている。耳を傾けているから、これは音のするものだな。どうやらベルのことを
 言っているようだ、それからふたつをくっ付けてといっているから、脳ベル、のうべる、のおべる、のべる、ノベル。ああ、そうか、
 小説のことなんだ。小説をどうするんだろう。あっ、ズボンのポケットに手を入れて、それから上着のポケットにも。どうやら
 目一杯のお金を集めて何かをするようだぞ。15センチ四方くらいの四角を描いてからそれを食べている。どうやら食パンの
 ようだが、それによく似た言葉だと言っているようだ。しょくぱん、しょっぱん、しゅっぱん少し苦しいけれどここは助けて
 上げよう。そうですか、幼なじみの方が近く自費出版で小説を出されるんですね」
「しーっ、今は君の胸にとどめておいてくれないと駄目だよ。でも、もう少ししたら詳細を田中君に言ってあげるから」
「わーっ、楽しみだな」