プチ小説「友人の下宿で5」

「みなさん、本日はお集りいただきありがとうございます。前回の
 集まりはとても充実したものだったと思うのですが、余りに
 内容がハイレベルだったので、私、安城は消化できませんでした。
 また居眠りされていた方も多く見受けられました。そこで私は
 高月さんに申し入れをしました。もっとわかりやすい、できれば
 ピアノの曲をお願いしたいと言ったところ、ショパン特集をして
 いただけることになりました。それでは高月さん、はりきって
 どうぞ」
「ただいまご紹介にあずかりました、高月です。本日はショパン特集
 ということで、ショパンのピアノ独奏曲を聴いていただこうと思い
 ます。最初は、バラード全4曲です。ショパンの曲は3分から5分
 で終わる愛らしい曲が多いのですが、この曲はそれらに比較すると
 規模が大きくまた内容も充実しています。お聞きいただく、コルトー
 の演奏は未だに色褪せることのないロマンに溢れた名演奏だと思い
 ます。他に規模の大きな曲ではアンダンテスピアナートと華麗な大
 ポロネーズがありますが、この曲も一緒に楽しんでいただこうと思
 います。こちらはグルダの演奏です。それではどうぞ」

「次にお聴きいただくのは、ワルツ集です。この曲では、50年以上前
 から親しまれて来た名盤があります。ディヌ・リパッティというルー
 マニアのピアニストのもので、夭折の天才ピアニストが残した、掛け
 替えのない演奏です。悲痛なところと明るいところを巧みに演奏して
 おり、そのコントラストがこのレコードを魅力的なものにしていると
 思います」

「最後にお聴きいただくのは、マズルカ集です。マズルカはショパンの
 母国ポーランドの舞曲で、ショパンもこれを愛したくさんの曲を残し
 ています。こちらもカペルという夭折のピアニストでお聴きいただき
 ます」

「百田、どうだった」
「うん、前回は4畳半に10人入って聴くのがしんどいと思ったけれど、
 6人なら大丈夫だね。次回は別の友人に来てもらうことにするよ」