プチ小説「青春の光22」

「橋本さん、見物客をたくさん集める方法は考えられましたか」
「残念だが、いいのが思い浮かばないんだ。そこで田中君と話しているといい考えが浮かぶかもしれないと思って、
 今日は私のところへ来てもらったんだ」
「ぼくの方もいいアイデアが思い浮かばないのです...。あっと、驚くような方法はないかな...。そうだ、これはどうかな。
 われわれが語り部になって、本の宣伝を集まった人に聞かせれば面白いかも」
「ちょっと待ってくれないか。われわれがと言うが、語るのは田中君じゃないのかな」
「いえいえ、大阪にはしゃべくり漫才というのがあり、それをやるんですよ。最近では、関西弁は今まで以上に
 関東の人にも受け入れ易くなっていますから」
「そうか、われわれが漫才をしてそれを聞いてもらうのか。それは面白い。それで、台本は」
「しばらく時間を下さい。明日、またこの時間にここに来ますから」
「ああ、待っているよ」

「やあ、出来たかな。2人分台本を書いてくれたんだね。ほな、始めまひょか」
「ぼくはええよ。きみからやで」
「えーっと、最近、きみ、楽しそうやけど、何かええことあったんか」
「やっぱり、わかるか。実は面白い本を読んどるんや。これやねんけどな...」
「「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊か...。で、どんな内容の本なんや」
「そうやなー、端的に言うと、教養小説ということになるんやけど...」
「教養やなんて、難しい言葉使わんとって」
「そしたら、どない言うたらええねん」
「発展小説あるいは形成小説、わかりやすく言うたら、ビルドゥングスロマンちゅーんや」
「どこがわかりやすいんや。要は主人公が成長して行く姿を描いとるわけなんやな」
「それだけなんか」
「そうやないで、この作者の船場はんという人はそれだけやったらあかんと思うて、なにせサービス精神旺盛な人やから、
 あの大文豪のディケンズの力を借りよったんや」
「そら、大文豪やから、力も強いんやろね」
「違うがな、ディケンズの作品のええとこを小説の中に取り入れて楽しませてくれるんや」
「そやけどそのまま取り入れるんはまずいやろ」
「それは問題ないんや、船場はんなりに消化して小説の中に取り込んでいるから。ディケンズが自分の小説について語るところが
 あるけど、それは実は船場はんの考えを反映したもんなんや」
「でも、200年前に生まれた文豪と今の時代の若者がどうやってかかわるのか、ようわからんけどどうなっとるんや」
「それはやな、大学に入って真っ先に大学図書館で自分の小説を読んでくれたから言うて文豪が喜んでくれて、夢の中に
 出て来るようになったんや」
「そうかいな。面白そうやな。わしも読みとうなったわ。それ貸してんか。......。
 田中君、...。ここのところは別の台詞に変えた方がいいんじゃないか」
「でも、漫才だから、切れの良いオチがないと...。それにこれは試作品だから、悪い点があったら何でも言って下さい」
「なら言わしてもらうが、これでは販売促進に繋がらないだろ」
「......」