プチ小説「青春の光24」

「は。橋本さん、全開ギャグができたと聞きましたが、本当ですか」
「そうなんだ、田中君にさっそく聞いてもらおうと思うんだが、覚悟はいいかな」
「笑いが止まらなくなっても、信号待ちをしている時に突然思い出し笑いをしてしまっても後悔しません」
「よろしい。ところでこれは、「こんにちは、ディケンズ先生」を書いた、船場弘章君から聞いた話なんだが、
 クラリネットの演奏技法のひとつにトリルというのがあって、指定の音とそのひとつ(あるいは半分)上の
 音との間を行ったり来たりするというのがある。1拍の間に8回上下するのだそうだ。指定の音が、
 レならレミレミレミレミと言った感じだ。これをギャグにしたら面白いと考えたんだ。こんな感じで、
 レミレミレミレミレミちゃんでーす」
「それから次があるんでしょ」
「これは船場君が言っていたのだが、ラの音とミの音のキーというのは、割と近くにあって、トリルではないが、
 連続して鳴らすことができないこともないそうだ。こんな具合に...、ラミラミラミラミラミちゃんでーす」
「......」
「どうやら不発だったようだな」
「ぼくは、そんなのよりも古典的なアプローチがいいように思います。ここはふたりで即興的においうえお作文とか
 頭にディ、ケン、ズと入れた折り込み川柳とかを作ってみるのも面白いんじゃないかと。あいうえお作文の方は
 少し長くなりますが、こん、に、ち、は、ディ、ケン、ズ、せん、せいを頭に付けるというのはどうでしょう」
「面白そうだな。ちょっと待ってくれ、川柳の方はできたぞ。ディケンズは 健全な笑いが ずらり並ぶ」
「うーん、内容は満点ですが、面白くないですね。こういうのはどうですか。ディバイディ 健康な笑いで
 ずばらしくなる毎日」
「ごまかしや字余りがあって面白いね。よーし、あいうえお作文ではその手を使わしてもらおう。では、たのむ」
「じゃあ、行きますよ。こんにちは、ディケンズ先生のこんは」
「こんなすばらしい小説は読んだことがない」
「には」
「にゃんとも言えない楽しさ」
「ちは」
「ちゃんと古典のエッセンスを取り入れている」
「はは」
「はみだし気味のところも多々あるが」
「ディは」
「ディケンズ先生の」
「ケンは」
「賢慮が随所に見られる」
「ズは」
「ずばらしいパロディーも見られる」
「せんは」
「センチメンタルなところもある」
「せいは」
「青春の喜びもあるこの図書を図書館で読んで下さい」
「謙虚ですね。にゃかにゃかいいと思います」
「そうか、瓢箪から駒が出るかもしれないからまたやろうか」