プチ小説「たこちゃんの神頼」

ゴッド ディオス ゴット というのは神様のことだけど、ぼくは二十歳の頃までは世の中が自分の思いどおりに
なるものだと思っていて、自分がこうしたいだとかこうなりたいだとか思うと自助努力しないでもいつかは叶えられると
思っていたんだ。ところが、二十歳の成人式の日に自宅にいて炬燵に入って冷静にその時点での自分を評価してみると、
将来の展望はまったく開けず、そればかりか八方塞がりであることに気がついたんだ。1年ばかりして軌道修正ができ、
今の自分があるが、これは「神さんのおかげ」であると言えると思う。ぼくは平均的な日本人と同じほどの信仰心を
持っていると考えているが、特定の宗教の熱心な信者ではない。正月に複数の神社にお参りをする他、阪急電車の
七福神めぐりを数年に1回して、ご利益をいただこうなどとのんきなことを考えている。そういうことだから友人を頼る
わけにいかず、困り果てている時には、たくさんの神社の神様のご利益を得るために、あちこちの神社にお参りする
ことになる。年末に困ったことが起きたり、翌年をより実りのある年にしたいと考えた時には、ぼくは大晦日から元日に掛けて
京都の5つの神社(北野天満宮、下鴨神社、上賀茂神社、平安神宮、八坂神社)のはしごをする。12月31日の午後10時
30分頃に自宅を出て真夜中の京都の街を歩いて5つの神社を廻り、元日の午前7時頃に帰宅するわけだが、もちろん
自助努力も怠らない。こうして多くの難題を解決し、多くの願望を成就させて来たわけだが、出世と恋愛については
ご利益があったとは言い難い。でも、出世も恋愛も多くの時間を掛けて実りあるものにしていくのだから、趣味に多くの
時間を費やしてしまうぼくにはいずれも高嶺の花になっているのかもしれない。読書や音楽鑑賞、音楽演奏や山登りに
費やす時間を恋人と過ごす時間に充てれば、人生をより実りのあるものにできると思うし、軌道に乗りさえすれば実りが
あるように専心するつもりだ。駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手は、この前会った時に、
女性というのは男に夢があるというそれだけで、魅力を感じるものなんやと言っていたが、今でもそう思っているのだろうか。
そこにいるから訊いてみよう。「こんにちは」「オウ ブエノスディアス セディセケエルセニョールセンバエルマエストロス
プレモデラノベラ」「そこまで讃えていただくとぼくもその気になってきました」「そうやろ。船場はんはもともと
調子乗りやから」「そう言われると少し気持が萎えて来ました」「あんたの「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 
近代文藝社刊は、日本一の教養小説や」「なんか力が漲って来ているように思います」「そうやその意気やで」
「で、次は何をしたらいいんでしょうか」「そら、いつものとおりやな、うさぎ跳びとリヤカーごっこをするんや。
何をするにも基礎体力はいるからな」「ああっ、そうして時は過ぎて行ってしまうんだ」「ほら、そういうところがあかんのや。
物事は順番にこなして行かんと、あとでエラい目に遭うんやで」「でも、ぼくは早く鼻田さんから肝心な話を聞きたいんです。
うさぎ跳びとリヤカーごっこをしなかったから、彼女に嫌われるとは到底思えません」「ええか、基礎体力を鍛えるのには
ちゃんとした理由があるんやで」「それは、なぜでしょうか」「うさぎ跳びは脚力が鍛えられるし、リヤカーごっこは腕っ節が
強くなる。つまり打たれ強くなるということや」「ぼくは彼女とどつき漫才をするわけではありません」「でも万一のことが
あったら」「万に一つもないと思います」「よっしゃ、船場はんのたっての願い聞いたるでぇぇ」「で、肝心な話というのは」
「それはやなー、そやから...」「そうだから...」「基礎体力は大事やよと言いたかったんや」「......」
そうして鼻田さんがぼくの足を持って持ち上げたものだから、リヤカーの役をしなければならなくなったんだ。
ぶつぶつぶつ...。