プチ小説「友人の下宿で7」

「皆様、お忙しい中お集まりいただき有難うございます。先週はお休みをいただきましたが、
 高月さんが何とかレコードを揃えて下さり、この会を再開することができました。高月さんも
 さらのレコードは学生には贅沢品という悟りをようやく開かれたようで、京都市内のいくつかの
 中古レコード店を回られ何回か会を開けるだけのレコードが集められたようです。それでは
 高月さん、はりきってどうぞ」
「本日は、ヴァイオリンの名曲を集めてみました。クライスラーの小品を最初に聴いていただこうと
 思いますが、このフランチェスカッティのアルバムでは、皆さんよくご存知の「愛の喜び」「愛の悲しみ」
 「ウィーン奇想曲」「美しきロスマリン」「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」の他に
 「プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ」「ロンドンデリーエア」も楽しんでいただけます」

「次にはやはりツィゴイネルワイゼンをお聴きいただきましょう。最近はヴァイオリン協奏曲や
 ヴァイオリン・ソナタがよく聴かれますが、SPレコードの時代には1枚のSP盤の両面ににうまく納まり
 しかも大きな感動を与えてくれるハイフェッツのツィゴイネルワイゼンがよく聴かれました。
 ハイフェッツはステレオ録音も残しており、こちらもすばらしい演奏ですので、本日はこちらを
 お聴き下さい」

「次は私の最も好きなブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」です。標題の雨の歌と
 いうのは、第3楽章の主題として彼の作曲した歌曲「雨の歌」を使っているからですが、全体的に
 しっとりとしていて甘くせつない気持ちにさせる曲です。ダヴィド・オイストラフ他でどうぞ」

「最後はやはりヴァイオリンの曲としてはまず筆頭にあげられる、メンデルスゾーンのヴァイオリン
 協奏曲をお聴き下さい。私は難しいことは言えないし、音楽的な評価は何も言えないのですが、
 誰もが冒頭のメロディを聴けばこの音楽の虜となり、最後の速いテンポで盛り上がり最高点に
 到達して終わるのを聴けば、クラシック音楽のすばらしさを実感することでしょう。ミルシテイン
 の独奏、アバド指揮ウィーン・フィルでどうぞ」

「おい、百田どうだった」
「ああ、今日は高月さんが賑やかにやろうと言ったので、5人連れて来たが、床が抜けるといけないので
 体重60キロまでに制限して昼食を食べずに来てもらった。これからその5人と河原町に食事に行こう
 と思うんだけど、高月さん、安城、野山、名取どうしますか」
「いこう。いこう」