プチ小説「青春の光38」
「は、橋本さん、どうされたのですか」
「田中君、お待たせしたが、ついにできたんだよ」
「そうですか、橋本さんはこのところ、座っての作業が続いていたから、仕方がないですね」
「そ、そう、おしりにデンボができて、ぷちっとつぶしたら...、痛かった。なにを言わせるんだ。違う違う、他のがあるだろ」
「ごめんなさい、では、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ...」
「おぬし、できるな。そうではなくて...。待ちきれないから、自分で言うよ。この前に言っていた宿題のことだよ」
「PRソングのことですね」
「そうだ、「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊 の販売促進のためのPRソングのことさ」
「そう言えば、この前の話では、メンデルスゾーンの「歌の翼に」の替え歌にするということでしたが...」
「そうだ、それが完成したんだよ。で、今から発表させてもらうが、ここは船場君がプチ朗読用台本でしているように前口上を
入れさせてもらおうと思うんだが、いいかな」
「もちろん、大賛成です。で、どんなものですか」
「こんなんだ、ディケンズは14の長編小説と未完の『エドウィン・ドルードの謎』という小説の他たくさんの中、短編小説を
残していますが、希望に溢れる新進作家の船場弘章は『こんにちは、ディケンズ先生』という作品しか世に問うていません。
これは文豪ディケンズが主人公の夢の中に出て来て、人生相談に答えたり、自著について語ったりする心温まる小説です。
ディケンズの入門書としても最適ですので、是非一家に一冊お備え置き下さい。全体像が掴めないと買う気になれないと
二の足を踏んでおられるご同輩の方々のために、イマジネーションを喚起し購買意欲をそそる替え歌を作りましたので、
みなさんも一緒にお歌いください。それでは、みんなで歌いましょう。
夢の中にいーる ディケンズ先生
いつでも会いたいけーど 本を読まなきゃ駄目よ
『ディヴィッド・コパフィールド』『大いなる遺産』
『二都物語』そして『クリスマス・キャロル』
心ときめくから、みんなも読んでね
『こんにちは、ディケンズ先生』は
希望を紡ぐ図書なので
みなさんふるって買ってくださいね
よろしく
どうだい、なかなかよくできているだろう」
「ええ、「夢の中にいるディケンズ先生」や「希望を紡ぐ図書」というのは心に残るので、とてもすばらしいと思います。
だから...」
「だから」
「次は別の歌でお願いします。船場さんが好んでクラリネットで演奏する、ドヴォルザークのユモレスクなんていいと思いますが」
「よーし、やってやろうじゃないか」