プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 納涼編」

梅雨の真っ最中やっちゅーのにかんかん照りの日ぃばっかりで、脳味噌が溶けそうなんやけど、なんとかならんかいな。
こんな時はな、ぶるっとふるえるようなこと考えて、脳味噌を冷やすのが一番やと思うんやが、なんかないかいな。
そうや、「こんにちは、ディケンズ先生」って小説を書いた船場弘章の暑さ対策は水道水をがぶ飲みすることや
ちゅーてたけど、わしもなんぞ面白い暑気払いを考えて、ぶるっとしよかいな。
なんちゅーても一番ええのは、直接、身体に訴えかけることや。暑い日に神戸の王子動物園に行ったら、ようシロクマが
泳いでいるプールに氷柱を投げ入れとる。わしも氷柱を買うくらいの金は持っとるんやで、そんでな大枚はたいて氷屋に頼んで
わしの家まで持ってきてもろうた。自宅に風呂がないから、たらいで行水しようと思うたけど、身長180センチもある
わしが30キロの氷柱をかかえてたらいに入るのは、至難の業やと思うて、あきらめたんや。
でも、氷がもったいないと思うて、かき氷機を買うてきて30皿もかき氷を食べてしもうた。わしは飽きっぽいから、
メロン、ストロベリー、レモン、時雨金時、ミルク、メロン、ストロベリー、レモン、時雨金時、ミルクの順番で
食ったんやけど、食ってしばらくしたら。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるちゅーたんで、
あつあつのたこ焼きを30個食べて、温度調整したんや。お腹の調子は元どおりになったけど、元の木阿弥になってしもうた。
横でかき氷のシロップをかけてた船場弘章に、なんかええ方法ないかいなってきいたら、船場は言いよった。
にいさん、わたし、ええ方法知ってます。それは思いっきり怖い目をすることです。って言いよったんや。
わしが、6月に肝試しちゅーのは時期尚早ちゃうんかちゅーたら、船場は、ちゃうちゃう、ちゃうちわわとわけのわからんことを
言いよった。わしが、そんならお化け屋敷はどやちゅーたら、船場は、わたしがお化けをしても怖くないでしょと言いよった。
わしが、じらさんとはよ言えちゅーたら、船場は、大陸書房の怖い本をお貸しするので、それを読んでくださいと言いよった。
つぎの日に船場はわしの家に持ってきよったけど、ほんま怖いでぇーぇぇぇ。だいたいタイトルを見ただけでわしはぶるっと
震え上がったんや。
「死の世界」「神秘の世界ー四次元世界の謎ー」「超自然の世界」「日本の怪奇」「世界の怪奇」「心霊ミステリー」
「異次元の怪奇」「世界の怪奇船」「UFOの謎」「失われた文明」「世にも不思議な物語」
わしはそん中の「世界の怪奇」の目次をぱらぱらと見たんやけど、それだけでぶるっぶるっぶるっと3連発きてしもうた。
ピラミッドの呪い、ミイラの呪い、ダイヤの呪い、幽霊、ポルターガイスト、夜叫ぶ墓石、心霊写真、水の上を歩く少年、
空中に浮いた少女、セイロンの少女霊媒などがあり、わしは船場に、わしは怖いのはあかんから、持って帰れちゅーたった。
わしがもっと楽しく金のかからん方法はないんかと説教したったら、船場は涙目で、いくつかありますが、にいさんの
気に入ってもらえるかどうかと言いよった。ええから、はよ言えちゅーたら、船場は、やはり高所の恐怖というのは
ほんまに怖いと思います。高いところにかかっている吊り橋を渡るのとかバンジージャンプで高いところから飛び下りるのは
怖いと思いますと言いよった。わしがそんな遠くに行く金があったら、中古の冷風扇でも買うんじゃが、それがでけへん
いううとるやろがーーーーーっと怒鳴ったったら、近所の子が小さい時に使っていた、ビニール製のプールがあります。
氷柱なりなんなり入れて、ぶるっとされたらどないですかといいよった。わしが、よし、それでいこ、あんたも一緒にはいらんか
と言うたら、ぼくはそういう趣味はありませんと言うて、ビニール製プールを取りに行きよったけど、ほんまにおもろいやっちゃで、
船場は。