プチ小説「青春の光41」

「は、橋本さん、この前、ご自身で替え歌を作るとおっしゃっていましたが、できましたか」
「そ、そうだったかな」
「ほら、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」で「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著の
 PRの替え歌を作ると...」
「それはやめた」
「なぜですか」
「やはり仏の顔も三度までと言うし」
「メンデルスゾーンの「歌の翼に」とドヴォルザークの「ユモレスク」の二度だけではないんですか」
「田中くん、憶えているだろ。以前、三波春夫さんの「世界の国からこんにちは」とアイルランド民謡の
 「春の日の花と輝く」を替え歌にしたことを」
「ああそうでしたね。でもぼくは一向にかまいませんよ。それとも誰か別の人を意識して作られているのですか」
「もちろんだ。船場君の小説を読んでいただけるかもしれないすべての人を対象にしている。たとえ田中君が
 面白いと思っても、世間の目は厳しい。とりあえず仕切り直して、しばらくしてから別の曲の替え歌を作るよ」
「でも、4曲つくられているのだから、5曲目を作ったとしても、お叱りは受けないと思います」
「いや、私の替え歌は1つの貝の2枚の殻のようなものだから、2つで一区切りとなるのだ。ははは」
「なんだかへ理屈っぽいですね。「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は難しいですか」
「......。実はそうなんだ。宗教曲だから迂闊なことは言えないし...」
「そんなに身構えなくっても、いいと思うけどなぁ。どうせ替え歌なんですから気楽に...」
「そうか、そう言ってくれるなら、実はここに用意してあるんだ」
「なんだ、あるんじゃないですか」
「じゃあ、いくよ。

 いーくぞ、せんば
 あともう少しだ
 栄光の日はもうすぐだ
 サカリの日は過ぎてしまったが、
 でも創作意欲は衰えていない

 彼の信条ユーモアとウィットは
 今もつきることなく湧き出ている
 これは大阪人のいちびり精神が
 彼の心の奥にあるからで
 金太郎飴のように作品の中で
 顔を出すことだろう。

 「こんにちは、ディケンズ先生」をどこかに入れたかったのだが、うまくいかなかったよ」
「いえいえ、なかなかいい出来だと思います」
「ありがとう。ところで、船場君もこの前どこかにPRに行って来たと聞いたが」
「ええ、でも今回は他にも目的があったらしいですよ。観光も目的のひとつですが、もう一度、函館山から
 函館市内と駒ヶ岳を望む景色を見てみたかったらしいですよ」
「そう言えば、「こんにちは、ディケンズ先生」の中で東北から北海道を旅するところが出て来る。特に函館山の場面が
 印象に残っているが、それとまったく同じところに行ったのかな。山形とか」
「船場さんは、今回の旅行では、小樽、札幌、函館、青森、仙台、宇都宮に行ったということです」
「宇都宮に?関東地方も行ったのかな」
「最初、飛行機で新千歳まで行き、初日は小樽と札幌に行き札幌で1泊、2日目はスーパー北斗で朝一番に
 函館に出て函館山、五稜郭に行き、夕方に青森まで行き青森で泊まる。3日目は午前中は青森市内を歩き回って、
 昼前に新幹線やまびこで仙台へ仙台市内も歩き回って仙台でもう1泊。最後の日は時間があったので、宇都宮にも
 行かれたそうです」
「で、成果はあったのかな」
「今のところ、小樽と札幌と仙台の図書館に受け入れられているとのことですが、函館山からの景色も素晴らしかったし
 満足できる旅だったと言われていました」
「そうか、船場君も頑張っているのだし、われわれも世間をあっと言わせる、PRをしないといけないな」
「そうです。だから次回はなんでもありにしますから、あっと言わせてください」
「よし、じゃあ、田中君を驚かせるから、楽しみにしていてくれたまえ」