プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 日常生活編」

こんなこと言うても誰も信じてくれへんねんけど、わしはフツーの会社員や。だからストレスもたまる。
ストレスがたまったら、肩が凝るというのがおるけど、わしの場合、背中の真ん中が凝ってきよるんや。ほいで
町医者にかかったら、先生は、膏薬を出しとくから、2まい背中の中央に貼るんやで、ええなと言いよった。わしは、
一人もんやから、貼ってくれるやつがおらん。肩とか首とかに負からんかちゅーたったら、先生は、膏薬は痛いとこに
貼ってなんぼのもんや。そんなん言うんやったら、薬は出さんちゅーたから、言ー通りにします言うてもろて帰って来た。
そやけど家に帰って来たけど、どうにも手が届きよらん。何度もしているうちに、膏薬がくしゃくしゃになってしもうた。
6枚入りを5パックもろうたけど、2パックがなくなってしもうた。このままやったら全部なくなってしまうと思うたわしは
「こんにちは、ディケンズ先生」の著者船場弘章に電話して、どないしたらええんか訊いてみた。そしたら船場は、にいさん、
いいですか。ぼくのいうとおりにしたら、うまいこといきますから、そのとおりしてください。まず、にいさんが前転しても
ええくらいのスペースを用意してください。で、前転したら、ぴったり背中の中央に来るところに膏薬のセロハンをはがして
薬のついた側を上にして置いておいてください。そうしてゆっくりと前転すれば、あら不思議、輪転機のインクが印刷用紙に
つくように膏薬がにいさんの背中につきました。めでたし、めでたし。そう言いよった。さっそくやってみたんやけど、
うまいこと行きよらん。3畳一間のワンルームマンションに180センチの男が前転するところはどこを見てもないわ。
しゃーないから、壁に膏薬をセロテープで貼ってから、背中を壁に当てたが、セロテープの粘着力の方が強ーてまたくしゃくしゃに
してしもうた。そうや、孫の手の先につけたらうまいこと行くかもしれんと思うて、やってみたが孫の手につける時に挫折して
しもうた。そんなわけで、背中の真ん中は痛いままや。
こんなわしでも、会社ではみんなから笑いの絶えない明るい人と言われとるんやで。なんでかちゅーたら、時と場所を考えんと
大爆笑するからや。この前、社長に呼ばれて上司と一緒に話を聞いとった時にふと窓の外を見ると3本の電線の2つに2羽のハトが
とまりよった。じっとみているとハトのやつ間欠的にフンを出し始めよった。わしはなにかとても愉快な気分になって来てな、
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっと
笑うてしもうた。その時はそこで目が覚めて、助かったんやけど、それから2週間ほどして、今度は会議中にふと窓の外を見ると、
なんと電線の上に6羽の鳩がおって、前と同じように間欠的にフンを噴出しはじめたんや。わしは律儀な男やからきっちり3倍笑うた。
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっと
笑たった。周りをみるとみんな白い目で見よったんで、近くでびっくりして目えむいてた船場に、どないしたらええか訊いてみた。
ほしたら船場は、にいさん、こんなときはなんか言うてごまかすしかありません。そうや、昨日見た番組で言うてたことを思い出して
笑うてもた。思い出し笑いしてもたって、言うたら、ええんとちゃいますかと言いよった。わしは、自分がしゃべる番が来た時に
建設的な会社のためになる意見を言うた後で、いや実はさっき笑うたんは、思い出し笑いをしたからなんや。吉本新喜劇で
笑た笑た。ほんま、岡八郎もおもろいけど、船場太郎も山田スミ子もおもろいなちゅーたら、若いもんはみんな首かしげとった。
それで、その日からは、みんなわしのことを思い出し笑いをするへんなおっさんと言われるようになったんやけど、いまふと
窓の外を見たら電線にハトが100羽とまっていて、間欠的にフンを出し始めたんやが、わしは見んかったことにして、その場を
立ち去りたかったけど、それはわしの信条に反する思うて、こっそり誰もおれへんトイレで1時間ほど忍び笑いをしたんや。