プチ小説「青春の光43」

「は、橋本さん、前回登場していただいたピクウィック氏は今日は。登場されないのですか」
「田中君、実はあのあと彼と二人で打ち合わせをしたんだ。で、彼から提案があったのが、センセーショナルな登場というものだ」
「といいますと」
「「こんにちは、ディケンズ先生」の中でディケンズ先生が趣向を凝らして登場したり、退場したりするのを知っているだろう」
「そうでしたね。ディケンズ先生はそうして小川さんを励ましていましたね」
「ピクウィック氏は、それをやってみたいと言っていた。ディケンズ先生がしたのと同じ登場の仕方もしてみたいし、あっと驚くような
 独創的な登場方法もしてみたいと言っていた」
「で、今日はどんなふうに登場されるのですか。おお、警備室の外が明るくなって来た。もしかして...」
「田中君、そこのドアを開けてピクウィック氏に入ってもらって...ええっーーーーー」
「こんばんは、みなさん」
「ピクウィックさん、私は電飾の看板を前後ろにつけるだけと思っていたのですが、拝見したところ提灯をイメージした外観で
 真ん中のところは、JR大阪駅近くのマルビルの昔の電飾のように光る文字が順番に映し出されるようになっていますね」
「うーんと、なになに、「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊 この本は次の公立図書館で貸し出しできます。
 北海道札幌市、北海道小樽市、宮城県仙台市...」
「ちょっと待ってください。ぼくたちはPR隊なので、売り上げに直結をすることをしないと駄目ですよ」
「そうでしたね。じゃあ、こちらに切り替えましょう」
「うーんと、なになに、「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊 この本は先頃次の大学図書館に受け入れられ
 ました。興味をお持ちで同大学に通学されている学生さんは閲覧してください。東京芸術大学、京都市立芸術大学、尚美学園大学、
 名古屋芸術大学、札幌大谷大学、聖徳大学..」
「船場さんの本が芸大に入ったのですか」
「そうですよ。知らなかったのですか。先月のはじめに25の音楽学部のある大学図書館に船場さんがご自分で作成された文書を
 つけて代行発送してもらわれたんです。音楽会(ライヴ)の楽しいシーンが出て来るので、ぜひ貴大学図書館にも置いてくださいと
 書かれたのが、よい評価に繋がったのかもしれませんね」
「そうなんですか」
「船場さんは、7月に北海道と東北に行かれた後、8月は、月初に四国4県を、月末に九州の鹿児島、熊本、福岡を廻られました。
 10月19日のディケンズ・フェロウシップの秋季大会の発表までに公立図書館と大学図書館を合わせて受け入れしていただいた
 図書館を200にしたいと言われています」
「きっと船場君は四国や九州の名産品をたくさん食べて、ピクウィックさんのようになっていることだろう」
「それよりピクウィックさんは自分の役割を楽しんでおられるようですが、ぼくたちにとっては貴賓なので、粗相があっては
 ならないと思います。だもんでぼくたちも...」
「そう言うだろうと思って、田中君と私の電飾も用意して来たんだ。細かいことを気にせずに装着するんだ」
「装着するんだと言われますが、この提灯行列の片方の端のヘルメットを私がつけて、もう一つを橋本さんがかぶるんでしょ」
「そうさ、それでいい。ピクウィックさんの電飾は時代の最先端のハイテクノロジーと言えるが、こう言った素朴な電飾がそれに
 並ぶと時の流れを感じさせて、観衆の注目を集めることができるのだ。ははははは」
「そう言うもんですか」
「さあ、みなさん、それじゃあ、行きますよ」
「はいはい、行きましょう」