プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 中途半端はやめて編」
わしはとにかく中途半端なことは好きやないんや。そやからなこれと思うたら、ええかがんにしときーちゅわれるまで、
やめへん。そう言うてもな、わしはいちおう社会のルールは守るんや。そやからな、羽目はずすちゅーてもしれとるけどな。
それでも安全装置が外れて、暴走しだすと、そら、あんた、自制が利かへんようなるからほんまに怖いんや。一番困るんが、
食い放題なんやが、これはわしの家が貧しかったからちゅーんやないんやで。これにはきっかけがあるんや。高校時代に隣町にピザと
サラダが食い放題で確か700円という店ができてな、高校内でうわさになって、わしらもいってみーひんけということに
なったんや。それでも当時の700円ちゅーたら学食の150円のラーメン一杯で昼ご飯を済ませとったわしにとっては大金やった。
それでわしはな、絶対に元とるぞちゅーて店に入ったんや。当時、わしは60キロ足らずのどちらかちゅーと痩せたほうやったが、
それで歯止めがとれてもうて、あっという間に70キロを超えてしもうた。90キロ近くまで体重が増えたのも30半ばの頃に
神戸牛のすき焼き食べ放題という店に行ってからや。そら、あんた、笑とるけど、こらホンマのことやねんで。それまで食うた
ことがないピザが食べ放題やったり、わしが日本で一番うまい食べ物と思うとるすき焼きが食べ放題やったら、お腹が10センチ
くらい突出してもかまへんわいと思わせるくらい人間の自制心を失わせるもんなんや。「こんにちは、ディケンズ先生」の作者
船場弘章も最近、太ってきよったけど、きっと、小金が入って牛肉を毎日食べとるから、ああなったんやと思うんや。そうと
違うんか、船場、はよ言え、ちゅーたった。ほしたらな、船場は言いかえしよった。にいさん、想像するのは勝手ですが、
このぽんぽんはそんなえーもんは入っとりませんちゅーたんで、ほんなら何入っとるんか言うてみいちゅーたった。ほしたら、
船場は、このお腹の原料は、牛肉やのうて焼きそば、焼うどん、和そば、そうめん、スパゲッティなどからできとるなんて
言いよったから、そんなもんで太鼓腹になるはずないやんけちゅーて、頭突きをかましたった。ほしたらな船場は涙で目を潤ませて、
にいさん、人の話は最後まで聞いてください。これらの麺類をいっぺんにようけ食べるんです。焼きそばなら3食パックを一度に、
焼うどんなら3玉を、和そばなら4束を、そうめんなら6束をそしてスパゲッティなら半袋を一度に食べるんですわと言いよった。
わしは朝ご飯でも、ごはん、豆腐とうすあげとわかめのみそ汁、菜っ葉の漬け物、焼きシャケだけはないと気が済まんのやが、
船場にどんな朝ご飯食べとるねんてきーたら、船場は、それは朝食でも同じです。玉子2個のスクランブルエッグか納豆2パックか
インスタントラーメン一杯かです。テーブルに2つの皿が並ぶことはほとんどありませんと言いよった。わしは、おまえそんなんで
満足できるんかちゅーたら、船場は、餃子風味のハンバーグや野菜を刻んでカレーやシチューをたまには作ります。でも3、4日
続くのでうんざりしますがねと言いよった。わしは、もーええから、帰れちゅーたった。船場が帰った後、公園のベンチに座っとったら、
蚊がやって来てな、わしの脹脛をかみよった。でも心配せんでええねんで、ム◯を持って来とるからな。こうしてたっぷりと摺り込むと
さっきまでのかゆみがうそのようや。それでもな大腿を刺されると普通のズボンやったら膝までしかめくられへんから、困るんや。
そやから今日はこういう時のためにゆったりとしたズボンをはいて来たんや。それでもなこの蚊はわしの英知の上を行きよる。ちなみに
エッチとはちがうんやで。なんとこの蚊はわしのおしりをかみよったんや。それも一山越えて3合ほど下りたところをかみよったんや。
しかも左右両方や。それでわしはどうしようかと腕を組んで考えた。周りの人は眉間に皺を寄せて必死に考えとるわしを見て、
どないしたんや思うとったやろな。多分、ハムレットのような深刻な悩みを抱えとると思うとったんやと思うんやが、実際は、
公衆トイレに駆け込んでズボンを下ろしてム◯をぬろうか、その場でズボンのすそを尻までまくりあげてム◯をぬろうか決めかね
とったんや。そしたら、突然、船場が出て来よって、にいさん、ここは折衷案をとって、ここでズボンを下げて、ム◯をぬらはったら
どないですと言いよった。わしが躊躇しとったら、また船場が言いよった。にいさんは中途半端なことが嫌いなんでしょ。ほな
どうしたらええかおのずとわかるんとちゃいますかと言いよったから、おもわずズボンと下着を下ろしかけたが、こんなことをしたら
おまわりさんにつかまることに気がついて、もう一発、船場に頭突きをかましたったんや。