プチ小説「たこちゃんの講演」
レクチャー ディスクルソ フォルトラーク というのは講演のことだけど、 ぼくは10月19日のディケンズ・フェロウシップの
秋季総会でミニ講演をすることになっているんだ。会員になってまだ2年足らずなのに、大学の英文科の先生が大半を占める、ディケンズの
愛好家の人たちの前で発表させていただけるなんて、本当に光栄なことだと思う。講演させてもらえることになったのは、
小説「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊を著して興味を持っていただけたからだと思うが、その他にもいくつか
フェロウシップの会員の方に興味を持っていただけるようなことをぼくはさせていただいている。これはぼくがホームページをしているから
できることだけれど、ディケンズと関係がある小文をホームページに掲載するとすぐにフェロウシップのインターネット担当の先生に
お送りして来た。そのほとんどがフェロウシップの新着情報に掲載され、それが評価されたのだと思う。順番に拾って行くと、
プチ小説「こんにちは、N先生」、感想文「大いなる遺産について その2」、プチ朗読用台本「ミコーバの爆発」、プチ朗読用台本
「ピップの改心」、プチ朗読用台本「有頂天になったスクルージ」、プチ朗読用台本「エイミーの献身」、プチ朗読用台本「エスタの幸福」、
プチ朗読用台本「オリヴァーの危機」、プチ朗読用台本「デイヴィッドの決心」、感想文「チャールズ・ディケンズの長編小説について」、
感想文「リトル・ドリットについて その2」、プチ朗読用台本「カートンの愛情」、プチ朗読用台本「メアリーと愛息」、プチ朗読用台本
「ピクウィック氏の気概」ということになるが、M先生はいつも親切に応対してくださり、すぐに新着情報に掲載してくださる。
M先生にはいくら感謝してもし足りないくらいだ。今回のお話は昨年の秋季総会が終わってから日本支部長のS先生からあったのだけれど、
何度か直接指導してくださり、3月頃に発表用原稿が出来上がった。8月の下旬に演目が増えたので、原稿を手直ししてほしいとM先生から
依頼があり、司会のU先生の指導を受けることになったが、U先生も的確な指導をしてくださり、あとは発表までとちらないように練習して
おけばよいだけになったんだ。これまでこれといっていいことがなかった、ぼくの人生の転機になればいいのになと思っている。
駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手は、きっと発表したことはないだろうと思うが、そこにいるから確認してみよう。
「こんにちは」「オウ ブエノスディアス コンスプレセンシアラフィエスタレスルトマスアトラクティーバ」「そ、それは誰のことを
言われているのですか。まさかぼくのことを言われているのではないでしょうね」「何言うとるのん。あんたのことやでー」「でも、
ぼくにそんな彼女はいません」「ええか、おらんのやったら、今から作るんや。船場はん、あんた今度発表すると言うとったやろ。
晴れの舞台に一緒に行ってくれる連れがおるのとおらんのでは、エラい違いや」「でも、どうすれば...」「なにゆうてんのん。
あんたにいろいろ教えてあげたことを実行すれば、間違いなく、彼女のハートをつかめるんや」「でもぼくが鼻田さんに教わったことと
言えば、「たこやきよりあなたがもっと好きです」と言えば相手に関心を持たせることができるということと打たれ強くなるために
うさぎ跳びとリヤカーごっこを一緒にしたこととフォークダンスを教わったことくらいですよ」「それだけあったら、十分や。要は
ハートを掴む言葉を考えて告白する。それから粘り強く、嫌がられん程度に好きだという気持を表明し続ける。そうして相手の気持が
自分の方に傾いて来たら、心がわくわくするようなもの、例えば踊りなんかに誘うんや」「そうですね、確かに鼻田さんが言われることは、
決して常軌を逸してはいませんが...」「なんや、なんか文句あるのん」「残念ながら、ぼくには告白する相手がいまはいません」
「がくっ、そうか、まあまた一から頑張らなあかんけど、長い人生やから何が起こるかわからん。それに期待して生きてたら、
きっとええことあるやろ。そうや、船場はんもあれこれ考えずにわしみたいにストレートに自分の気持を伝えてみたらどないや」
「どんなふうにですか」「そら、あなたを幸せにします。ぼくとつき合ってくださいでええんとちゃうかな」「そうしてみます」