プチ小説「青春の光44」
「は、橋本さん、もうすぐ船場さんの講演の日がやって来ますね」
「そうなんだ、田中君、君も行ってみたらどうかな」
「でも、会員の方以外は入場できないんではないんですか」
「そんなことはないさ、ディケンズ・フェロウシップのホームページにも書いてあるぞ。
トップページの上から3行目のところに、秋季総会(西南学院大学、10月19日)|
出欠報告(締切10月12日、非会員も出席可能)| と書かれてあるから、出席します
という報告をしておけば、船場君の講演を一般の(非会員の)方の出席も可能なんだ。
ただインターネットの環境がないと出席したいということが伝えられないので最低限
自分のパソコンでインターネットができないと駄目なんだ」
「そうですか。でも船場さんはどんな話をされるのですか」
「それは秘密だが、ディケンズ・フェロウシップの総会のページの 平成25年度秋季総会(PDF)の
PDFのところをクリックしてもらうと、どんな内容かわかることになっている」
「ちょっとやってみようかな。なになに、紹介文の最後のところには、
「ディケンズとともに生きて来た私の半生(中略)、講演ではその中のほんの一部を
お話 ししようと思います」と書いてある。演題は「ディケンズとともに」となっている。
船場さんは本当にディケンズがお好きなんですね」
「私は発表用の原稿を見せてもらったが、その好きだという気持が至る所に溢れている。
発表を通して聞くとディケンズと船場君とのつき合いはとても長いということがわかる」
「いつごろからなんですか」
「小学校高学年からのようだが、これ以上詳しいことは言えない。だが、他の情報提供をしよう。講演の中で、
船場君は「こんにちは、ディケンズ先生」ができるまでの経過がよくわかるように説明している。また
ディケンズの小説の名場面を5つ取り上げているので、こちらも楽しんでいただけるだろう」
「船場さんはサービス精神溢れる人だから、きっと当日配られる配布資料も凝られるのでしょうね」
「もちろんそうだ。この日のために、「こんにちは、ディケンズ先生」グッズをひとつこしらえたと言っていた。
他にも、別のバージョンのチラシ、船場君のホームページの案内などをお配りすると言っていた」
「でも心配事がひとつあるんです。その当日の恰好ですが、いつものように貧乏臭い恰好ではないでしょうね」
「それはここ半年で少しずつ買って行ったと言っていた。ラルフローレンのオリーブ色のジャケット、
ラルフローレンの紺色のパンツ、ダンヒルのシャツ、コムサのエンジのネクタイ、英国製の紳士靴...。
まあ言わば、船場君の頭の中のように混沌としている」
「ところでベルトはなしですますのですか」
「船場君はそこまでもたなかった。いつもしているベルトになるだろうと言っていた」
「でもネクタイはDAKS、バーバリーのスーツの英国もので固めてもよかったのではないかと思います」
「田中君、そんなお金は丸大ハンバーグのハイリホーの巨人が出て来て、船場君を逆さ吊りにしてゆすぶっても
出て来ないということはわれわれが一番よく知っていることじゃないか」
「それもそうですね」