プチ小説「青春の光45」

「は、橋本さん、もうすぐ船場さんの発表の日がやってきます。景気づけ をして上げられたら
 いいなと思うのですが」
「そうなんだ。それで替え歌を作ったのだが、今から聞いてくれるかな」
「で、どんな曲ですか。ぼくの知っている曲ですか」
「田中君は、以前、「こんにちは、ディケンズ先生」船場弘章著 近代文藝社刊に出て来る
 三つのイギリスにちなんだ曲のうちの一つ「春の日の花と輝く」の替え歌を歌ったのを
 覚えているだろ。今日はその残りの2曲のどちらかの替え歌を聞いてもらおうかと思うんだ」
「わかりました。「グリーンスリーヴス」と「ロンドンデリーエア」ですね。そうですね
 ぼくは「ロンドンデリーエア」がいいな」
「実は、今度のディケンズ・フェロウシップの秋季総会には、ロンドンのディケンズ博物館の
 館長さんも講演をされるんだ。そこで私は船場君にこの曲を歌うように言ってやるつもりだ」
「早く聞かせてくださいよ」
「わかった。それでは、行くよ。
  
  文豪との出会いは、とおくむかしにさかのぼる
  それからのちは折りにふれて彼の小説を読んだ
  読むたびに心はげまされ、温かい気持になったが、
  この喜びはいつまでも続くことだろう

  そうさ文学というのはそういうものなのさ

 少し字余りが多いが気にしないでくれ」

「あれからはや幾年、幾星霜。いや10日、橋本さんはうまく船場さんに餞ができたのだろうか」
「やあ、田中君、安心してくれたまえ、私の替え歌は船場君に届けたから」
「で、懇親会でそれを歌ったのですか」
「いや、船場君は橋本さんの気持はとても嬉しいと牛のように自分の涙を嘗めていたが、ハンカチで
 涙を拭うと、私は懇親会で4年半習ったクラリネットで「ロンドンデリーエア」「グリーンスリーヴス」
 「春の日の花と輝く」を演奏するつもりです。前日に福岡市内の楽器屋さんのスタジオで練習して
 本番に臨みますと言っていた」
「で、うまく行ったんですかね」
「発表は100点満点だったが、演奏は80点くらいの出来だったと言っていたよ」
「それって、いい結果ではないですか」
「そうさ、そう言って船場君は牛のように鼻と目尻を嘗めていたよ」
「そうですか」