プチ小説「青春の光50」

「は、橋本さん、おや、ピクウィックさんとユライヤ・ヒープさんもお揃いで、何かあるのですか」
「そうさ、われわれのこのプチ小説が50回目を迎えたということで、関係者に集まってもらうことにしたんだ。
  みんなで賑やかに何かやろうということなんだ」
「わー、楽しそうですね。でも、どんなことをするんですか」
「そりゃー、わたしのできることと言ったら、替え歌を作って歌うことや金粉を全身に塗って走り回ることくらいだが、
  田中君はいろいろできるんじゃないか」
「いいえ、ぼくは橋本さんの無茶におつき合いして来ただけで、自分では何もできないですよ。きっとピクウッックさんも
 ヒープさんも同じことだと思いますよ。橋本さんが何か面白いことを企画しないと...。そうですよね、ピクウィックさん」
「われわれの目的は、船場さんの『こんにちは、ディケンズ先生』をPRすることなんですから、それから逸脱しなければ
 何でもありじゃないんですか。私は何でもやりますよ」
「そうだ、それならヒープさんと漫才をしてもらったらどうですか。ヒープさん、どうですか」
「あんたらがしがない俺に何をさせたいのかよくわからないが、それで母さんを幸せにできるんだったら、何でもするよ」
「よし、じゃあ、決まった。それじゃあ、どうせなら4人でやろう。4人の特性を生かすためにはどんなスタイルの漫才がいいかな」
「そうですよね、みんなでやるのがいいですよね。じゃあ、4人でBGMをバックに漫才というのはどうですか。大阪の漫才グループで
  4人というのは40年ほど前の横山ホットブラザースかチャンバラトリオ、トリオとなっていますが実は4人漫才です、になります。
 だからみんな音楽が駄目ということになれば、みんながちょんまげのカツラをかぶってハリセンチョップを浴びて、尻から
 落ちないといけないんです。なにせ、チャンバラトリオの見せ場はそこなんですから」
「確か田中君は学生時代ギターをやっていたね。ピクウィックさんは何か楽器を演奏されますか」
「私は少しアコーディオンをやったことがありますね」
「じゃあ、しゃべくりは、橋本さんにまかせるとして、ヒープさんには残った...」
「そうだな。残った、のこぎりの演奏をしてもらうことにしよう。よし、じゃあ、明日までに楽器と台本を用意するから、各人何を
  アドリブでしゃべればよいか、考えておいてくれ」
「おい、おまえたちは、おれをからかうためにここに呼んだのかい。もうなにがなんだかわからないよ」
「そうだ、ヒープさんは言葉につまったら、そのギャグを連発するとうけますよ。田園調布だけでなくビバリーヒルズにも
  家を建てることができるんですから、その意気で頑張ってください。それから次にお会いするまでにのこぎりで
 ロンドンデリー・エアを演奏できるようにしておいてください 」
「おい、おまえたちは、おれをからかうためにここに呼んだのかい。のこぎりで演奏しろなんて、なにがなんだかわからないよ」
「そうそう、その調子でお願いします」
「じゃあ、お二人ともよろしくお願いします」
「ユライヤはぷりぷりして帰ってしまったが、大丈夫だろうか」
「まあ、台本を読み上げるだけというより、予定にない何かが起こるかもしれないという緊迫感があるほうがいいかもしれませんよ。
 それがライヴの醍醐味ですから。ユライヤさんが演奏できなくても何とかなるでしょう 」
「そうだ、どうせやるなら、ライヴでやったほうがいいな。ヴィオロンのマスターに頼んでおこう」
「いや、どうせするなら、紀伊国屋書店の大きなテレビの前がいいですよ」
「......」