プチ小説「アキさん、ごめんね2」

てっきりアキさんにふられたとわたしは思っていましたが、2ヶ月してまたアキさんからメールが来ました。

あれから少しクラシック音楽を勉強しました。いまではワーグナーも大好きです。「ローエングリン」や
「ジークフリート」なんか中世の騎士や神話の世界を描いていてとてもすてきだと思っています。

わたしはいそいそとメールを書きました。

またメールがいただけるなんて思ってもみませんでした。ところでワーグナーは管弦楽曲を集めた
レコードと「タンホイザー」だけしか知りません。それでもカラヤンの管弦楽曲集やサヴァリッシュの
「タンホイザー」はすばらしいと思います。


すぐにメールがきました。

わたしはぜひあなたに「ローエングリン」や「ジークフリート」を聴いていただきたいのです。日本神話が
あるようにドイツにも神話があるのです。また中世の騎士の物語も素敵です。それは大昔の物語ですが、
ロマンに満ちた、激しい感情を露にしたものであると思うのです。

わたしは彼女の気持をわかってあげないといけないのですが、どうしてもいいたいことを言わずにおれません。

わたしは、「タンホイザー」が好きです。というのも、タンホイザーは人間らしい、身近な存在に思えるからです。
ヴェヌスに誘惑されたり、友人と仲良くしたりけんかしたり、最愛の人を愛するがゆえに失ってしまう。タンホイザーの
物語は矛盾に満ちていますが、それ故にタンホイザーは本当に人間らしいと思うのです。


1ヶ月して、メールが来ました。

わたしは、実は、「トリスタンとイゾルデ」のファンでもあります。媚薬を飲んでしまった男女が深い仲になる
というのは、なんだかロマンティックな物語じゃないですか。

わたしは、残念ながら、それを受け入れるだけの度量がありませんでした。

わたしは、むしろ同年生まれのイタリア人、ヴェルディの方が好きです。「椿姫」「トロヴァトーレ」「アイーダ」
なんか魅力的なアリアがいっぱいです。ワーグナーの音楽はゆったりした音楽なので、バイロイトなどで
大編成のオーケストラで聴くなど、特殊な状況で聴かないとありがたみがわからないのかもしれませんね。


2ヶ月して、メールが来ました。

どうもあなたとは、うまくいかないようです。ごめんなさい。さようなら。