プチ小説「友人の下宿で10」
「みなさん、お忙しい中お集りいただきありがとうございます。今日は久し
ぶりにオペラを聞かせていただけるとのことです。それでは高月さん張り
切ってどうぞ」
「今日は、ヴェルディの「椿姫」をお聴きいただくことにしました。みな
さんは「三銃士」で有名なアレクサンドル・デュマの息子のデュマ・フィス
が書いた小説「椿姫」をそのままオペラにしたと考えておられるかもしれま
せんが、小説が男の主役を中心に描いているのに対し、このオペラでは女主
人公が中心になっているように思います。ここであえて男の主役、女主人公
と書いたのは、小説とオペラで登場人物の名前が違っているからで、小説で
はそれぞれアルマン・デュバルとマルグリット・ゴーチェ、オペラではそれ
ぞれアルフレード・ジェルモンとヴィオレッタ・ヴァレリーとなっています。
なによりオペラのタイトルが「ラ・トラヴィアータ(道に迷った女)」と
なっているのが、意味深長です。アルフレードの決断の弱さがヴィオレッタ
を道に迷わせてしまったとも考えられると思います。オペラは3幕ものです
が2時間足らずですので、通して聴いていただきます。それでは、あらすじ。
第1幕ではヴィオレッタの家での舞踏会の場面。アルフレードが突然めまい
を起こしたヴィオレッタにやさしく声を掛けます。ヴィオレッタはその純粋
な愛に心を打たれますが、自らの境遇を省みてアルフレードの訴えに応えら
れるかと思います。しかし狂おしい思いをとどめることはできません。第2
幕ではパリ郊外の田舎の家が舞台です。ふたりはパリ郊外で愛に満ちた生活
に入りますが、アルフレードが留守のおりにアルフレードの父親がやってき
て
アルフレードの妹(娘)の縁談に差し支えるから別れてほしいとヴィオレ
ッタに願い出ます。ヴィオレッタはパリを去り、アルフレードは捨てられた
と思います。第3幕はヴィオレッタの病室。父親に経緯を知らされたアルフ
レードはヴィオレッタの病室にかけつけ、「パリを離れて」もう一度やり直
そうと歌いますが、父親とアルフレードに見守られてヴィオレッタは息を引
き取ります。カルロス・クライバーの指揮でお聴きいただきます」
「百田どうだった」
「ううっ…。俺の生活と余りに懸け離れているのが悲しい。社交ダンスはもち
ろんフォークダンスもしたことがないんだから」
「そうかそれなら今度近所の盆踊り大会に一緒に行こう」