プチ小説について

2009年9月にプチ小説の第一作「さくらそうの花が咲く頃に」を書いて以来、5年が経過しました。今までに
いくつかのプチ小説を連載しましたが、中でも「こんにちは、ディケンズ先生」は現在、279作まで完成しており、
今後も連載を続けて行く予定です。「こんにちは、ディケンズ先生」は一念発起して、2011年10月3日に
出版したおかげで、多くの方が応援してくださり、106の大学図書館、184の公立図書館に受け入れていただいて
います。ただわたしの力不足のこともあり、3年経過した今も多くの方に楽しんでいただいているとは言えません。

このプチ小説というのは見ていただくとおわかりいただけるように、A4サイズのコピー用紙1枚に収まるくらいの小説、
ちっちゃな小説を意味しています。ちっちゃな小説ですが、いろいろな実験的なことを行っています。ひとつは
前に書きました連載ですが、他にもひと味違った小説にしようといろいろなことを試みています。

わたしは若い頃から西洋文学に親しんだおかげで、いろいろな形式(こういう言葉を使うのはおかしいのかもしれませんが)
の小説を知ることができました。ギリシアの哲学者が弟子と対話するような対話形式の小説、18世紀の小説家スターンが
書いた『トリストラム・シャンディ』が始まりとされる意識の流れと呼ばれる小説、文豪ディケンズが書いた『荒涼館』の
ような、一人称で書かれた章と三人称で書かれた章を使い分け、主人公の心理描写と物語に奥行きを持たせることの両方を
可能にしている小説、ほとんど段落を変えることなく最初から最後までページが真っ黒なブロッホの『ウェルギリウスの死』
のような小説、ギリシアの英雄叙事詩『オデュッセイア』のパロディと呼ばれるジョイスの『ユリシーズ』のような小説。
いずれもわたしが小説を書くためのお手本となったものですが、それがどれかを紹介しますと、対話は「青春の光」、意識の
流れは「いちびりのおっさんのぷち話」、一人称と三人称の使い分けは「こんにちは、ディケンズ先生」、真っ黒なページの
小説は「たこちゃんの●●」、パロディ小説は「こんにちは、N先生」ということになります。

これらの小説が日の目を見るかどうかは、わたしがこれからどれだけ精進するかということになるのですが、みなさんの
応援は大きな力になりますので、ブログで取り上げていただいたり、レヴューを書いていただけるとありがたいです。

思えば。ホームページを始めたのが、2002年2月でした。最初は、クラシック音楽のエッセイだけを掲載していましたが、
やがで自分で写した写真を掲載するようになり、読書感想文(古典入門のページ)や山の写真・体験記(登山のページ)も
掲載するようになり、5年程前からは、プチ小説とクラリネット日誌も掲載するようになりました。ホームページを
始めた頃から、始めた東京阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロンでのLPレコードコンサートも9月7日に、50回目を数えることに
なりました。この催しに何度かお越しいただいた山茶花クラブ代表の荒井良雄先生は、ヴィオロン音盤文化賞2011の表彰を
していただいただけでなく、わたしが翻訳されたディケンズの小説を参考にしながら作成した、プチ朗読用台本「ミコーバの
爆発」と「カートンの愛情」を荒井先生が開催される「ヴィオロン文芸朗読会」の中で取り上げていただきました。
また、『こんにちは、ディケンズ先生』を世に送り出し、ディケンズ・フェロウシップの会員にさせていただいたことで、
大学で英文学を教えられている先生方と会話をする機会ができ、英文学に関する情報が得られるようになったことは
今後のわたしの人生の大きな財産になると考えています。

まずホームページを開設し、続いてこのプチ小説を書き始めたことで、どれだけわたしの人生が豊かになったことでしょう。
これから先もプチ小説を書き続けることで人生をますます豊かにしたい、そう思ってこれからもこの楽しい作業を続けて
行きたいと思っています。