プチ小説「アキさん、ごめんね6」

ちょうど2ヶ月すると定期刊行物のように、アキさんからメールが来ました。

お便りがないので、メールしました。最近は、ドビュッシーやラヴェルなどのフランス音楽に興味を
持っています。フランスといえば、ベルリオーズの幻想交響曲が浮かびますが、私はバレエ音楽が好きなので、
真っ先に、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」が頭に浮かびます。


私は、急いで返事を送りました。

私も以前はラヴェル「ダフニスとクロエ」をクリュイタンス盤でよく聴いていました。ところがある日、モントゥ盤で
聴いてみたところ...。いや、やめときます。これは私が感じたことで、みんながそう思うとは限らないわけですし。
ベルリオーズの幻想交響曲は、モントゥ指揮サンフランシスコ交響楽団が不滅の名盤ですが、ミュンシュ指揮
パリ管弦楽団もいいですよ。


アキさんからすぐに返事が来ました。

ミュンシュの幻想交響曲はチェック済みです。同じ組み合わせのブラームス交響曲第1番と同じように重厚な演奏ですね。
それよりモントゥの「ダフニスとクロエ」はどうなんでしょうか。勿体ぶらずに、おっしゃってください。


私は、どうしようかと悩みましたが、包み隠さず説明しました。

実は、東京の名曲喫茶でこのモントゥ盤の「ダフニスとクロエ」を聴いたことがあります。クリュイタンス盤は
落ち着いた管弦楽作品といった印象でしたが、モントゥ盤はまったく趣が異なり、おしりがむずむずするような悶絶いや
全身がもえたぎるような官能的な作品になっています。わたしは自らのレコードコンサートでこれを掛けたのですが、
最後まで聴き続けるのが恥ずかしかったのか、ほとんどの方が帰宅されました。拝み倒して、70代くらいの男性に
残っていただき、最後までレコードコンサートをすることができましたが、そういった苦い経験があるのです。
官能的なアルバムといえば、ジャンルは異なりますが、チック・コリアが結成したリターン・トゥ・フォーエバーの
ファースト・アルバムの前半部分もこういった内容で、厳格なジャズ喫茶でこれをリクエストするとお客さんはみんな
帰ってしまう気がします。


1週間して、アキさんから返事が来ました。

ハルオさん、あなたが刺激的なことを書かれていたので、思わず2つのアルバムを買ってしまいました。感想は差し控え
させていただきますが、もともとフランス音楽はパリという芸術家がたくさん集まる街で生まれた音楽なので、多少は
そういうところがあるのかもしれません。他にそういう音楽を知っておられたら、ご教示ください。


私はあまり気が進まなかったのですが、次のようなメールをアキさんに送りました。

タイスの瞑想曲で有名な歌劇「タイス」が多分、そういったカテゴリーに属する音楽だと思います。私は、このオペラの
もととなったアナトール・フランスの『舞姫タイス』を読みましたが、とても官能的な小説でした。それにいくつか
レコード・ジャケットやCDやDVDのパッケージを見ましたが、...とても官能的でした。多分、タイスの歌い手は
踊らなくてはならないので、スタイルがよくないと難しいかと思います。こんなところで、よろしいですか。


アキさんからすぐに返事が来ました。

あなたの説明はもの足りませんが、すぐに購入することに決めました。