プチ小説「友人の下宿で11」

「今日は、ロシアの管弦楽曲をいくつかお聴きいただくとのことです。それでは、
 高月さん張り切ってどうぞ」
「みなさんはロシアの作曲家と言えばチャイコフスキーを思い浮かべることと思い
 ます。あるいは、もっと現代の、交響曲第5番「革命」のショスタコーヴィチや
「春の祭典」のストラヴィンスキーを思い浮かべるかもしれません。それは標準的な
 考え方で正しいのですが、今日はさらに深くロシアに根ざした音楽をいくつか聴
 いていただきたいと思いました。ご承知のように、ロシアは大きな国で中央アジア、
 極東、ヨーロッパ東部、イスラム諸国などに接しており、そういった文化の大きな
 影響を受けています。そんな音楽をいくつかお聴きいただきます。最初は、イッポ
 リトフ・イワーノフの組曲「コーカサスの風景」です。お聴きいただくとおわかり
 になると思いますが、ご当地の民謡などをふんだんに取り入れたきらめきに満ちた
 曲です。ロジェストヴェンスキー指揮モスクワ・フィルの演奏です」

「次は、ボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」です。この曲は同じメロディ
 が何度も繰り返されるのですが、小さな音から大きな音へ、そしてまた小さな音へと
 することで隊商が草原を通り過ぎる様子をうまく描いています。このメロディにノス
 タルジックな旋律がからみ、異国情緒を盛り上げて行きます。演奏はロジェストヴェ
 ンスキー指揮パリ管弦楽団です」

「次にお聴きいただくのは、ムソルグスキーの「展覧会の絵」です。ラヴェルが編曲
 したものもありますが、本日はピアノ独奏でお聴きいただきます。ホロヴィッツが独
 自の解釈で演奏したもので、迫力満点の演奏です」

「最後にお聴きいただくのは、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」
 です。アラビアンナイトの物語を王妃シェエラザードが語るというかたちで構成され
 ていますが、色彩感豊かな曲で一度聴かれればこの曲の虜となるでしょう。アンセルメ
 指揮スイス・ロマンド管弦楽団の演奏でお聴き下さい」

「百田、どうだった」
「最近は、8時からの新日本プロレスの時間にかぶってしまうのでどうかなと思って
 いたけど、これくらいの長さなら丁度いいね。今日は俺の好きなグラン浜田は出て
 来るのかな」