プチ小説「青春の光60」
「やったな、船場君、えらいぞ」
「は、橋本さん、ど、どうかされたのですか。船場さんにいいことがあったんですか。宝くじが当たったとか。大金を手にしたとか」
「いや、彼はもともとお金をつぎ込んで、何かを当てようとする人間じゃない。ローリスク、ローリターンの人生を送っている」
「そうですよね。少しでもお金が入ると、きっとLPレコードコンサートで使用するレコードを買ったりとかしますよね」
「そうだ」
「うーん、それだったら、ぼくにはわからないなあ」
「前回のこの小説の中で、われわれのこの小説が今年2月末で終わるかもしれないという話をしただろう」
「ええ、現在のHPサービスが終わるのにうまく乗りかえができないと言われていましたね」
「だが、安心したまえ。船場君はそれをうまくやってくれたんだ」
「そう言えば、ブルーの背景だったのが青空に雲が浮かんでいる壁紙になって、雰囲気が変わっていい感じと思っていたんですよ。じゃあ、これからも、思う存分、われわれも活躍できるわけですね。ほんとによかったですね」
「そうだ、私もみなさんに喜んでいただけるよう、金粉を塗ったり、メリケン粉を塗ったり、靴墨を塗ったりして喜んでいただくつもりだ。だからこんなこともするんだ。ガバッ」
「わー、すごい。おなかのところに船場さんの似顔絵が描いてある。なにかやってくださいよ」
「じゃあ、こんなのはどうだ。本日は雨天なり」
「わあー、すごい。口もちゃんと動いている」
「ところで話は変わるが、われわれの活動もすぐにというわけには行かないようだ」
「橋本さん、もう裏声で船場さんのマネをして、腹話術をする必要はないと思います」
「そうだったな」
「ええ、わかりますよ。いろいろ事情があって、4月以降に本格始動となるだろうということは」
「船場君は、「クラリネット日誌」は今まで通り続ける。ディケンズ・フェロウシップ関連の「プチ朗読用台本」「ディケンズ関連の図書の紹介」「プチ小説『こんにちは、N先生』」などについても今まで通りに掲載していくつもりだが、プチ小説、特に「こんにちは、ディケンズ先生」の続編については掲載までに時間がかかるだろうと言っていた」
「僕たちの任務としては、『こんにちは、ディケンズ先生』をいろいろな形で宣伝してその結果、爆発的に売れるということですが、そちらの期待はあるのでしょうか」
「たくさんの図書館に入れていただいたのだから、いつかは日の目を見ると思いながら、時が来るのを待てばいいんじゃないか。ソウだよな、船場ジュニア。ソウダヨ、オマエ。それに船場君も秘策を考えているようだし」
「秘策ですか」
「しーっ、これは秘密だから、ここまでだ。それに出版社もしばらくは取り扱ってくれるようだし」
「そうですよね。船場さんはああいった風貌ですので、有名になってテレビなんかに写されるのは気の毒な気がします。有名にならないほうがよいのかもしれません」
「その通りだ。おいおいおい。領分というものをわきまえているのさ、船場君は、おいおいおい」
「そうですよね、ははは」
「まあ、われわれはこれからも彼のためにここで頑張ろうじゃないか」
「ええ、精一杯頑張りますとも」