プチ小説「青春の光64」

「は、橋本さん、どうかされたのですか」
「うーん、意外だな、田中君は、気になることはないのかい」
「船場さんの小説にわれわれが出る機会が減ったということですか」
「もちろんそうさ。わしは、もうすぐしたら75話になるから『こんにちは、ディケンズ先生』と同様に、『こんにちは、橋本さん』という小説を出版してもらえると思っていたんだ。それなのに船場君はここ8ヶ月で2つしか書いていない」
「まさか、橋本さんはわれわれが登場する小説を購入する人がいると思っているんじゃないでしょうね」
「そりゃー、わしは顔に自信があるから10人くらいは買ってもらえると思うな」
「そうかもしれません。でも、宣伝も何もしないで身内の人に買ってもらうだけなら、そのくらいがいいところでしょうね。本を出版できたということが大きな満足になると思いますが、後に続かないでしょう」
「そうだよな、資金がある人は200万円くらいの出版費用は苦にならないだろうけど、船場君はただのサラリーマンだから、その費用を捻出するのも大変だろう」
「おっしゃるとおりです。それで4年間せっせと貯めたお金で出版したわけです(本当は借金をしたのです)が、とにかく売れないことにはどうにもならないと言われていました」
「でも、第1巻の方は公立図書館と大学図書館を合わせて、300になったんだろ」
「もちろんそれは大きな価値のある勲章で、船場さんも胸を張っていいと思います。ですが、後世に名を残すためには、今の○千倍くらいは売れないとダメでしょう。出版社が企画出版で出しましょうと言われるようにならなければ、出版は4年に1度できればいいところでしょう」
「われわれも船場君のホームページで宣伝隊として精一杯頑張っているが、たくさんの人に見てもらうのは難しいようだな」
「本の雑誌ダ・ヴィンチの12月号に『こんにちは、ディケンズ先生2』の広告が掲載されましたが、五紙や大手出版社の雑誌などは広告費用が高額なので利用できません」
「まあでも船場君は苦難の道を選択したんだから、われわれも精一杯応援するさ。でもさっきも言ったけど、ここのところ船場君あまり小説を書いていないんじゃないか」
「ええ、そうですね。それにはいくつか理由があります」
「転居したことも入るのかな。幽霊が出るとか言っていたが」
「まあ、それは大したことないでしょう。船場さんは梅酒を一合飲んで耳栓をしっかりすれば、トントントンという音は気にならないと言っていました」
「じゃあ、ホームページのソフトを変えたことかな」
「ええ、それが理由のひとつです。dreamweaverとhomepagebilderとでは使い勝手が違うし、Windowsは使い慣れたMacのようには行かないと言っていました。でも慣れたら、なんとかなるでしょう。それより...」
「多分、売り上げが伸びないというのが大きな理由なんだろうな。ぱーっとして、すかっとしたら、船場君のことだから突っ走ることだろう」
「もちろん、多くの人からの好い評価と励ましがあれば、せっせと小説を書かれると思います」