プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 市民マラソンにエントリー編」

わしはちいこい頃から運動が苦手で、スポーツは自分でするよりテレビで見て楽しんどった。休みの日になると父親がテレビのスポーツ中継をよく見とったんで、隣に座って観戦したもんやった。ラグビー、アメフト、テニスなんかはルールがもうひとつようわからんのでのめり込むちゅーことはなかったんやけど、すもう、マラソン、スキーのジャンプなんかはルールが簡単で、手に汗握ったんで、大相撲中継や別府大分やびわ湖のマラソン中継は楽しみにしとった。わしが高校生の頃には、黒姫山、富士桜、旭國のちびっこ三人組の相撲もおもろかったけど、魁傑、輪島、北の湖なんかの上位陣の相撲もなんかユーモラスなところがあって楽しかったと記憶しとる。マラソンはわしが中学校の頃、君原、宇佐美両選手が頑張っとったちゅー記憶しかないが、30キロを過ぎたあたりからの駆け引きが面白うて、画面を食い入るように見たもんやった。もしわしに人一倍の基礎体力があって、例えば、豪栄道のようなスピードとパワーを持っているとか、瀬古利彦のようにストライドが余りのうても早く走られる体力があったら、自分ですもうやったりマラソンをやったりしてスポーツを楽しんでいたかもしれん。でもよう考えるとわしみたいなせっかちで、年長者との付き合いが下手な人間はスポーツ界ではうまくやっていけへん気もする。煽てに乗りやすいけどすぐ覚めるし、年下のもんの面倒見がええとも言えん。そんな調子やから、万一才能があったとしてもあかんかった気がする。それでも中年になってきたら、健康のために必要やと思うてトレッキングやウオーキングを始めたんやが、いつまで続くやろか。そうや!船場が登山をやっとる時間がなくなったちゅーて、ジョギングを始めたちゅーとったけど、最近、どないしとるんか訊いてみたろ。おーい、船場、おるかー。はいはい、にいさん、どないしはりました。お前、去年の12月からジョギング始めたちゅーとったけど、まだやっとるんか。はい、途切れ途切れですが。まあ続いとるちゅーのはええことや。そやけど飽きっぽい船場が単調に右足と左足を交互に出すだけのスポーツをよう続けられるなぁ。にいさん、それは違います。周りの景色は変わって行きますし、特に僕が走っているコースは川べりの道で季節の移り変わりでも景色が変わって行くんですよ。春は土筆、秋は萩なんかが印象に残っています。それに最近は携帯ラジオだけでなく、音楽プレーヤーなんかも小型化されているんでバッグなしで気軽に聴きながら走られるんですよ。ほうか、そらあんたの言う通りやが、何の目標もないちゅーのは張り合いがないんとちゃうか。いえいえ、目標は作りました。来年の1月22日に開催される市民マラソンに出ることにしたんです。そ、そんなんにエントリーして、大丈夫か。マラソンちゅーたら、42.195キロ、昔は死に行くごと言って恐れられてたんやぞ。まさか、最初からフルマラソンに出られると思っておられるんではないでしょうね。ほたら、ハーフマラソンか。まさか、始めてまだ1年も経っていないんですよ。当然、10キロです。で、最近はどのくらい走っとるんや。家から京阪枚方市駅までで、昨日、時間を計ってみたら、往復、13キロでした。1時間53分で走られましたから、何とか制限時間内に走られると思います。その市民マラソンの10キロは1時間30分以内に走られないと失格になってしまうんです。ほう、そうなんか。ほたら、とりあえずええ記録を出して、上位入賞を狙えや。そうしたいところなんですが、やはり1時間を切らないと上位には入られないようです。それから1月29日にクラリネットの発表会があるので、正月休みはクラリネットの練習に時間を費やすことになるでしょう。それでも直前の週は夜間に近所を1時間ほど走ろうかなと思っています。船場、それよりなー、クラリネットを吹きながら走ったらどないや。背中にのぼりを付けて。「『こんにちは、ディケンズ先生』よろしくお願いします」と書いたら、一石二鳥、いや一石三鳥やで。そや本番にその格好で赤い帽子を被って走ったら、ベスト仮装行列賞をもらえるかもしれへんで。なぁぁぁぁぁるぅぅぅほどーおうおうおう、それはいいかもしれませんね。