プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 遠い昔の晩餐編」

わしがちいこい頃、父親に冬のボーナスが出ると駅前の食堂に出かけたもんやった。最初は赤壁食堂という地味な名前の食堂やったが、わしが小学校の高学年になる頃には富味喜利という少し高級感がある食堂に行くようになった。赤壁食堂は日替わり定食と麺類、というてもそばとうどんだけなんやが、とカレーくらいしか置いとらんかった。富味喜利はレストランみたいな感じて、ハンバーグ、オムライスそれからスパゲッティも置いとった。それで弟と妹はハンバーグやオムライスを頼みよったが、わしはとにかく腹いっぱい食べたいちゅー目的があったんで、カレーライスとかけうどんが食べたいちゅーたった。そしたら母親がすかさず、そんなもん、いつでも食べられるんとちゃうん。他のにしちゅーた。それでわしは10分ほどメニューを見て考えて、ほたらカレーうどんとライスにするわちゅーたった。そしたらな母親は、遠慮せんと肉の入ったもんを頼んでええんよと言いよった。それでわしは、肉料理と認識しとる豚まんを1人前ちゅーたった。母親は、ほんなら、みんなで豚まんを3人前食べよかちゅーてな、話がまとまって、楽しい夕食が始まったもんやった。この晩餐会はわしが中学3年になるまで続いたんやったが、中学3年の頃にはわしも育ち盛りやったもんやから、母親から何が食べたい言われて、思わず、中華定食2人前食いたいちゅーたった。そしたら母親は、中華定食は1人前にして、豚まんを3人前にしとき。みんなで食べましょと言いよった。今彼考えると母親は豚まんが好きやったみたいや。高校に入ってからは家族旅行に行くようになって、ボーナスが出ても、家族で食事に行くちゅーことはなくなったんやが、今でも懐かしい思い出として残っとる。最近はようさん外食チェーン店があって、美味しいもんがそんなに遠くに行かんでも食べられるんやが、家族みんなでわいわいと食べると何でも美味しいとわしは思うんや。わしも船場もそういうことには縁のないまま終わりそうやが、船場はいつも何を食っとるんか訊いてみたろ。おーい、船場、おるかー。はいはい、にいさん、食事のことですね。朝ごはんのことですか、昼ごはんのことですか、晩ごはんのことですか。それはやな、お前、晩ごはんはいろいろ食べてるちゅーやろから、朝ごはんと昼ごはんやな。ぼくの場合、朝ごはんで何食ものおかずを並べて食べる時間も経済的余裕もありませんので、一番安くで済む、カップ麺か卵3個にしています。なるほどなー、それやったら、金がかからんからええかもしれへんな。昼ごはんはおにぎり3個です。会社の食堂がビュッフェ式で食べ過ぎてしまうので、安上がりのおにぎり3個にしました。おにぎり3個ちゅーて、お前、よう飽きひんな。そりゃー、同じ形のもんを3つ食べると思うと行き詰りますが、中にピリ辛高菜、昆布、明太子、シャケ、ツナマヨ、梅干し、納豆、おかか、たらこが入っていますし、たまに燻卵、鮭はらみ、ネギとろなんかを奮発していますから、飽きることはないんですよ。そうかもしれんな、わしもそうしよか。でも、それだけでは足りませんので、たまに飴玉をしゃぶって空腹感をやり過ごすことがありますね。ふーん、でもそんなに炭水化物、炭水化物やったら、太るんとちゃうか。でも、昔の人は、腹減ったとなると、おにぎりやうどんを食べていたんですから、炭水化物を馬鹿にするのは罰が当たると思います。そうかー、で、船場、晩ごはんは、主に何を食うとるんや。それはもちろん炭水化物が大好きですから。お好み焼き、焼きそば、スパゲッティ、カレーライス、餃子3人前です。そうか、そこまで徹底しとるんやったら、わしは何も言わんぞ。一生続けることや。いえいえ、もちろん、お金持ちになれたら、食生活を変えるつもりですよ。ほんで、何食うねん。イタリア料理なんかリッチな感じがしていいですね。ピザ、ラザニア、グラタン...。こら、あかんわ。