プチ小説「青春の光70」

「は、橋本さん、どうかされたのですか」
「田中君、忘れたのかい。今日は第1回船場弘章を励ます会だということを」
「ああ、そうでした。で、ゲストはいるんですか」
「残念ながら、スキンヘッドのタクシー運転手鼻田さんもいちびりのおっさんこといちびりさんも仕事が忙しいというこで、欠席なんだ」
「じゃあ、3人でこじんまりとすることにしましょう。おや」
「やあ、船場くんが来たようだ。わしが出迎えるとしよう」
「それにしても、ぼくの下宿よりもどこかのレストランですればいいのにな」
「田中君、お久しぶりです」
「やあ、船場さん、お元気そうですね。最近は、クラリネットの発表会や高槻シティハーフマラソンで10キロを走ったりして、お忙しそうですね」
「ははは、小説が売れないんで、今のうちにネタづくりや体力づくりでもしておこうかと思いまして」
「そうなんだ、船場君は小説が売れないから、そのうちフルマラソンを走ることだろう。クラリネットも上達して、福祉施設を慰問するかもしれない」
「いえいえ、ぼくには40キロを走る体力はないですし、音楽の基礎ができていないので発表会での演奏が晴れ舞台なのです」
「そうですか。でも、2月18日、25日と2週続けて、20キロを走ったんでしょ。なら、来年はハーフマラソンは出場できるんじゃないんですか」
「そうだといいですが、昨日も20キロ余りを3時間半もかかったんですから。それにわずか7、8キロの差なんですが、13キロとは全然違って、疲れと筋肉痛が予想以上なんです」
「まだ、筋肉痛が取れないのかな」
「ええ、それにぼくは身体が固いので、背中に膏薬を貼るのがうまくいかないのです」
「そうか、うまいぐあいに昨日温湿布を大量に購入したから、貼ってあげよう。じゃあ、Tシャツ1枚になって背中をまくりなさい」
「わかりました。よろしくおねがいします」
「じゃあ、いくよ」
「ひゃあ、つめたーいぃぃぃぃ」
「ぼくも、やらせてください」
「ちめた」
「うーん、わしももう1回させてくれ」
「つ、つ、つめたーーーーっと」
「わー、ぼくももう1回」
「ひい、ちめたーい」
「これでよし。船場君の背中も膏薬でいっぱいになったし、ちょうどいいぐあいに、船場君のリアクションのネタも尽きたようだし」
「おふたりともご協力ありがとうございます。それでは用事が済んだんで、ぼくはこれで帰ります。『こんにちは、ディケンズ先生』と『こんにちは、ディケンズ先生2』を今後ともよろしくお願いします」
「じゃあ、近々に第2回をやるから、来てね」
「ええ、もちろん」
「あれっ、船場さん、帰っちゃいましたけど、いいんですか」
「ああ、船場君はこの場を借りて、PRをしたかっただけなんだ。最近われわれは、船場君の本が売れないことをいいことに宣伝活動をサボっているから、尻をたたきに来たんだよ。われわれは膏薬を貼ってあげたが、ほんとは斬新なCMを考えてあげないといけないんだ」
「そうですね」