プチ小説「友人の下宿で13」

「本日は、オペレッタを2曲お聞きいただくということで、一体終わりがいつになるか不安なのですが...」
「高月さん、2時間から3時間もあるオペラを2曲も聞くというのは、はっきり言って...」
「ははは、心配入らないさ。今日聞いてもらうのは、レハールの「メリー・ウィドウ」とJ.シュトラウス2世
 の「こうもり」なので、盤にもよるけど、ふたつあわせて4時間もかからないのさ。それに踊りのシーン
 が多くてストーリーが余りわからなくても乗りのよい音楽に溢れているから、どちらもあっという間に終わる
 という感じさ。因に今日聞いてもらう「メリー・ウィドウ」のアッカーマン盤は75分くらい、「こうもり」
 のベーム盤は90分くらいだから、午後5時過ぎから始めても、新日本プロレスは見られるよ」
「今日は、エル・カネックとタイガーマスクがタッグで対戦するんだから、頼むよ」
「それでは、まず「メリー・ウィドウ」から、ダニロ伯爵と銀行家の老人と結婚してすぐに未亡人となったハンナ
 との恋のかけひきを描いていますが、それにツェータ夫妻、カミューがからんできます。まあ、僕たちには
 到底理解できない世界が展開しますが、音楽は極めて美しく、「ヴィリアの歌」はその中でも最も優れたもの
 だと思います。シュヴァルツコップとクンツの名演が聞けるアッカーマン盤でお聞き下さい」

「次は、「こうもり」です。これには最近出た、C.クライバー盤(この話は1982年頃を想定しています)の他、
 2種類のカラヤン盤、ボスコフスキー盤などの名盤がありますが、今日は、ヤノヴィッツとヴィントガッセンの
 歌唱が印象に残るベーム盤をお聞きいただきます。こちらもストーリーとしては、仮装舞踏会の帰りに置き去り
 にされ、子供たちに笑い者にされたたファルケ(その時にこうもりの格好をしていた)がアイゼンシュタインに
 復讐をするという軽喜劇で、舞踏会のシーンが多く、J.シュトラウス2世のおなじみの旋律がたっぷり聞かれ
 ます」

「百田どうだった」
「やっぱりオペレッタも難しいな。プロレスのように...」
「なんだい」
「トイレに行く時間が決まっていれば、鑑賞しやすいんだが」