プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 ビニールプールは安上がり編」

わしがちいこい頃は、8月は今みたいに暑いことはなくて、団扇や扇風機で凌げたもんやった。夕方には、長椅子で寛いだり、将棋を指したりする大人の姿があちこちで見られたもんやったが、今は真夏は一日中家に籠ってクーラーを効かせて、テレビを見たり、インターネットをしたり、ゲームをしたりでやり過ごしている大人が多いみたいや。避暑のために山や海に出かけるちゅーのもあるんやが、何べんも行くちゅーわけにいかんから、毎日をどないしたら快適に過ごせるんかちゅーのを考えんといかん。わしは3年前までは、光熱費を抑えるちゅーのもあって、夜間は冷房を入れへんかったんや。ほやけど2年前に毎晩えらい汗が出て、枕が朝触るとおしぼりのように濡れててな、大丈夫かな思うてたら、熱中症になってしもうた。ほんでそれからは熱帯夜の夜は一晩中クーラーを入れることにしたんや。そしたら熱中症になることはなくなったんやが、光熱費が嵩んでな、食費を切り詰めなあかんようになったんや。休みの日の昼食がそうめんか讃岐うどんになって久しいんやが、もう少し節約して、昔みたいにラーメンライスに戻したいと思うとる。船場は、「こんにちは、ディケンズ先生」「こんにちは、ディケンズ先生2」が全然売れないと嘆いとったが、この酷暑をどうやってやり過ごすつもりなんやろ。おーい、船場おるかー。はいはい、にいさん、このくそ暑い夏をやり過ごす方法のことですね。そうや、なんかええ方法あるんか。そりゃー、えり好みしなければ、解決方法はあるもんですよ。ほう、そうか、ほたら、その方法を教えてくれるか。それはですね、あの懐かしいビニールプールを...。ちょっと待ってくれ、そ、それはわしの威厳というか、権威とかを損なうもんやから、やりたくないんや。何を言っているんですか。コストパフォーマンスも優れています。ホームセンターで2千円ほどのビニールプールを買いさえすれば、あとは水道代くらいなものです。快適なので、読書も可能ですよ。ほう、そうか、ほたらやってみるけど、わしみたいな身長180センチのあるような大人が入れるようなビニールプールはあるんやろか。安心してください。先程、ホームセンターで買って来ました。にいさんがよろしければ、下の駐車場でさっそく始めたいと思うのですが。よっしゃ、わしもえり好みできるような立場にないから、何でもやりまっせー。ちゅーてたら、駐車場に来てしもたけど、ここに開店するんか。そうですよ、にいさんはビニールプールに空気を入れてください。私はそのバケツで水を汲んできて入れますから。海パンを穿く必要はないですが、上半身裸の方が快適でしょう。このプールのよいところは好みに応じて水温を調節したり、様々な色、香りが楽しめるところですが、問題点はすべて自分でしなければならないところです。ほうか、ま、いっぺん入ってみるわ。うーん、これは冷たくて気持ちええわ。ほやけど、背中もお尻の下もクッションが少ないから、快適とは言えんのお。にいさん、これは前に僕が作った両手を使わずに読書ができる器具です。これを使えば、読書ができますし、さらに快適だと思います。では、後は、にいさん、ひとりで何でもやって、通行人の目を楽しませてください。お前、それは許さん。一緒におってくれ、そやないと寂しいやないか。わかりました、今日だけですよ。あかん、8月中は開店するときにはおってくれ。