プチ小説「友人の下宿で14」
「みなさま、本日もお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。先週はオペレッタを
鑑賞していただきましたが、もっと馴染みのある曲を掛けてほしいとのご希望があり、本日は
ドヴォルザークを特集していただくことになりました。それでは高月さん張り切ってどうぞ」
「今日は、ドヴォルザークのオーケストラ曲、室内楽2曲ずつお聞きいただきます。最初に室内楽
を聞いていただきますが、まず弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」から。ドヴォルザークは
アメリカに留学したことがあり現地の音楽を自分の作品に取り入れていると言われています。
この曲もそのようですが、最初から最後まで明快で親しみやすい旋律に溢れており馴染みのある
曲のナンバーワンとも言えると思います。スメタナ四重奏団の演奏でどうぞ」
「次は馴染みはないと思いますが、すぐに馴染める曲です。ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」
です。こちらはドヴォルザークの母国の民謡の旋律からヒントを得たと言われていますが、どの
楽章も魅力に溢れています。スーク・トリオの演奏でお聞き下さい」
「オーケストラ曲の最初は、チェロ協奏曲です。古今東西のチェロ協奏曲の中で最も有名で内容も
充実しており私も好きな曲です。名曲なので、カザルス、フルニエ、シュタルケル、デュ・プレ
など名演が多いのですが、本日はフルニエがセルと共演した演奏をお聞き下さい」
「本日最後は、第2楽章の旋律が有名な交響曲第9番「新世界より」です。最近はベートーヴェン
の第9番「合唱」を年末に、こちらを新年に演奏することが多いようですが、馴染みやすい
旋律は他の3つの楽章にも見られます。私個人では、最終楽章が好きで、いつも棒切れのような
ものを振り回してしまいます。この演奏もたくさんの名演がありますが、今日はワルター指揮
コロンビア交響楽団の演奏でお楽しみ下さい」
「百田どうだった」
「俺も家路なら中学校で習ったよ。それに小学校の時は毎日のように家路を聞いていた」
「なぜだい」
「毎日、閉門の時に家路が下校音楽として流れていたんだ。あーあ、なんかノスタルジックな気分
になってきた。もう一度、アンコールとしてそこだけ掛けてくれないかな」
「お易い御用さ」