プチ小説「青春の光71」

「は、橋本さん、どうかされたのですか」
「田中君、君は気づいていないのかい。プチ小説のページ4の最初がこの「青春の光」となったのを」
「それはそうですが、それがどうなんですか」
「まずは、飽きっぽい船場君がよくぞここまで続けられたなという感慨だ」
「確かに、7年余りよく続いたものですね」
「この調子で、75話まで行くと、『こんにちは、ディケンズ先生』のように船場君が奮発して、単行本にしてくれるかもしれない」
「まさか。『こんにちは、ディケンズ先生2』が苦戦している現状では、出版自体が難しいと思います」
「まあ、そうあっさり言われては、二の句がつげないのだが。ところこの「青春の光」という題がなぜついたかわかるかな」
「それは、1969年のアメリカ映画「青春の光と影」と関係があるんですか」
「ま、そうなんだが、この映画の原題は何か知っているかな」
「ええ、もちろん。挿入歌をジョニ・ミッチェルが歌っていますが「Both Sides Now」ですね」
「そのとおり。わたしの解釈なんだが、この歌は中年を過ぎてそれまでいろんな経験をしたが、世の中、甘いことばかりじゃない。むしろしんどいことの方が多い。そんな酸いも甘いも噛み分けたごく普通の人物が青春時代を振り返っているという感じだ。誰しも色んな印象的な場面を通り過ぎてきた。誇れるのはその両方を経験し、そのことを語ることができる今の自分があることだということを「Both Sides Now」は歌っているように思う」
「まあ、詞の解釈は大きく外れていなければ、それぞれが自由に感じて心にしまっておけばいいんじゃないですか」
「なるほど。で船場君はその青春の光の部分、主に笑いをこのプチ小説で取り上げようというわけなんだ」
「なるほど、それで橋本さんは全身に金粉を塗ったり、笑いのネタを考えたりして、ウケを狙うんですね。ところで、実際に『こんにちは、ディケンズ先生』があまり売れていないということなので、わたしたちもお手伝いしないといけないですね」
「もちろんそうしないといけないんだが、この本の出版を機に、船場君はいろいろな人と繋がりができた。大学の先生、翻訳家の先生、一般のディケンズ愛好家、いずれも素晴らしい方たちだ。普段、行くことのない大学に行くこともできる。10月7日には船場君が一度も入ったことがない、東京大学でディケンズ・フェロウシップの秋季総会が開催され、船場君も会員として出席する。2011年10月には京都大学で開催されたが、船場君は、一生入ることがないと思っていた大学に入って、講義を聴くのは有意義だと言っていた。まあ、そんなこんなで『こんにちは、ディケンズ先生』の出版で、いろんな繋がりができて良かったんじゃないかな」
「LPレコードコンサートも9月24日で62回目になりますね」
「そうなんだ。こちらもそもそもは2002年のホームページ開設に当たり、名曲喫茶ヴィオロンでLPレコードコンサートを開催したいとヴィオロンのマスターに相談したところ、プログラム、チラシ、解説を用意できるなら、開催してもよいと言われ、15年続いている。この調子で年4回開催すると船場君が70才になるまでには100回の開催が可能だろう」
「でも、それだけのネタがありますかね」
「まあ、船場君が東京に行く唯一の楽しみが中古レコード店でのお宝漁りだから、大丈夫だろう」
「じゃあ、これからもお互い、船場さんを支えることにしましょう」
「そうさ、もし、うまくいって、『こんにちは、ディケンズ先生』『こんにちは、ディケンズ先生2』が売れたら、わたしは金粉とメリケン粉のボーダー柄でメイクして、お祝いとPR活動を兼ねて梅田でパフォーマンスをすることにしよう」
「わあー、楽しみだな」