プチ小説「青春の光72」

「ぴゅー ぶるぶるぶる さぶー ぴゅー ぶるぶるぶる さぶー」
「ど、どうかされたんですか、橋本さん」
「いやー、最近、船場君は、こういいながら、出勤しているんで、思わず真似をしてしまったんだ」
「今年は12月初旬から寒い日が続いていますよね」
「そうなんだ。それでも船場君は冬のスラックスがなく、今年はコートを下ろさないと心に決めて、ジャケットで我慢している。寒い風が尻に当たると、思わず、さっぶーと言ってしまうようだ。『こんにちは、ディケンズ先生』『こんにちは、ディケンズ先生2』が全然、売れないから、そのことも寒さが身に沁みて元気が出ない原因となっているみたいなんだ」
「でも、今年(2017年)は、秋季総会が東京大学駒場キャンパスで開催されて、初めて東大構内に入ることができると船場さんは喜んでらしたじゃないですか」
「確かにそうだったが、船場君はその頃、内痔核の治療中で、元気がなかったようだ。楽しみにしていた懇親会もほとんど腰に掛けていたし、2次会に参加したものの、1時間程で帰宅したようだ。今は全快しているようだが、前のように鶏料理の暴食ができなくなったようだ」
「そう言えば、船場さんは鶏肉とコーヒーはやめたと言われてました。ビフテキの食べ過ぎやアルコールの取りすぎならわかりますが、鶏はあまり関係ないように思います」
「やはり痔の一番の原因は、辛いものだろう。で、次にアルコールだろう。でも船場君はそんなにアルコールを取らないから、何が原因だろうと究明しようとした」
「それで、鶏とコーヒーが突出していたということなんですね」
「そうさ、彼はストレスからか、8月にま●やのにんにくみそ焼き鳥定食のダブルサイズを3回も食べている。それに週末に鶏肉のから揚げや手羽先をうまいうまいと憑りつかれたように食べていた...」
「で、コーヒーの方はどうだったんですか」
「最近、船場君は前日の睡眠時間が5時間30分を切ると昼から眠たくなる。それで仕事中にこくりこくりと舟をこがないように昼食後に家から持参したコーヒーを400ccほど飲むようになったんだ」
「確か、船場さんは朝にコーヒーを400cc飲まれるんでしたよね」
「そう、だから毎日800cc近くのコーヒーを飲んでいたんだ。船場君はこの2つが内痔核になった原因に違いないと思いこんでいるんだが、果たして医学的に正しいのかどうかはわからない。でも今のところ、再発していないところを見ると一理あるのかもしれない」
「どうなんでしょうね」
「そんなわけで、内痔核で船場君は秋を棒に振ったようだ。この冬場に巻き返しを図りたいところだったが、今のところ本が売れたなどのいいニュースは入っていない。まあ唯一いいニュースと言えば、肖像画を描いていただいたことだろうか」
「そうですね。それから1月20日のクラリネットの発表会にむけて頑張っておられるようですので、こちらもよい結果が出ればいいですね」
「そうだな、だからわれわれも船場君のために頑張らないといかん」
「そうですよ。『こんにちは、ディケンズ先生2』がこのまま売れないと来年の10月には市場から消えることになりますし、その時はわれわれの役目も終わりになり、職探しをしなければならなくなるでしょう」
「そうなのか」