プチ小説「青春の光73」

「は、橋本さんどうかされたのですか」
「やあ、田中君、立春を過ぎたと言うのに船場君が活動しないものだから、叱咤激励しようと思っているんだ」
「どうやってですか」
「その前になぜ船場君が活動しなくなった原因を探ってみよう」
「そうなんすか」
「船場君は寒いのが苦手で、一旦風邪を引くと長引いてしまう。それで最近平日は午後10時には床についていたようだ」
「でもそれなら、休日に創作活動をすればよいのではないですか」
「船場君は、休日忙しい。クラリネットの練習もしたいし、ジョギングもしたい。たまには梅田界隈を散策し、🍛を食べたい」
「なるほど」
「それから船場君は内痔核を患ってから、その原因と思い込んでる(わたしはそんなあほなと思うんだが)🐓肉と☕を控えている。眠気覚ましが取れなくなったので、早く寝ないと仕方がなくなった」
「へえー」
「船場君は春や秋に小旅行をして創作意欲を喚起していたのだが、🏠のローンなど小金が入用でさっばり旅行ができなくなった」
「ふーん、そうだったんですか。ぼくは船場さんは髪の毛が薄くなっただけじゃなく、🏰に近いグレーになったので、体力が落ちたのかと」
「それを言うなら、白に近いグレーだろ。確かに以前なら、月に1回は比良山に山登りに行き、毎朝千回背筋をしていたのだが、山登りは行かなくなったし、背筋も2日に1回500回位になっている。でもジョギングを2週間に1回しているし、背筋は週末に2500回まとめてしている」
「じゃあ、体力の方は大丈夫そうですね」
「まあ、多少太ったが。そんなこんなで状況が悪い中、船場君は頑張っているんだが、今年の10月に試練がやってくる」
「そ、それってなんですか」
「船場君が『こんにちは、ディケンズ先生2』を発刊して今年の10月で3年になるが、あまりに売れないので、1巻のように継続して出版社に取り扱ってもらえるかが大きな問題となっている」
「でも2巻も、大学図書館、公立図書館の両方とも80館以上が受け入れされていますし、2巻の方が面白いという話も聞きますよ」
「まあ、そのあたりのことを評価してもらえるといいが...。船場君は来年4月に定年となるので、その記念に続編の出版を考えているが、2巻が廃刊となったのでは、それも出せなくなるだろう」
「で、どうされるのですか」
「来月、船場君は出版社に相談するようだが、うまくいかなければ、今年10月で、『こんにちは、ディケンズ先生』は、1巻のみの取り扱いとなる」
「さみしい話ですね」
「まあ、人生、望みが叶うこともあれば、そうでないこともあるさ。船場君もいい年だし、現実を直視するいい機会だと思うんだ」
「少し厳しいのではないですか」
「いや、『こんにちは、ディケンズ先生』の出版を機にいろんな人と繋がりができた。それだけでも出版は有意義だったと思うよ。それ以上を望むのなら、退路を断って小説を書くのに専念するとか、お百度参りをするとかが必要だと思うんだ」
「そうかもしれませんね」