プチ小説「青春の光5」

「 この前はすみませんでした」
「何かあったかな。君が謝るようなことが...」
「そうですか、それならいいんです。でも、寡黙な橋本さんが思い出し笑いをされるとは...」
「そうかな、私は楽しいことは大好きさ。でも、羽目を外してはいけない。君の指摘は正しかったと思うよ。
 君が一所懸命考えたキャラクターを笑ったりしてすまなかった」
「いえいえ、いいんですよ。ところで、前に言っていた話に戻りますが、「ほの明るいものを見つけては
 なるべくたくさんの人で楽しむ」って何かもう一度考えてみたんです」
「ふんふん」
「朗読よりももっと手近にあるものを見つけたんです」
「何かな...、笑いとかもそうだと思うが」
「よくおわかりですね。でもそれだけでは半分です」
「そうだね、笑いというのも思い出し笑いのようにどちらかというとつまらないことや卑猥なことに強く反応して
 笑う場合もあれば、ほのぼのとした暖かみのある口元が緩むだけでほとんど声となって出ない笑いがあると思うね」
「ぼくはどちらの笑いも興味がありますが、どちらかというと静かな方が好きですね。思い出し笑いはしますけど...」
「後の方をなるべくたくさんの人で楽しむというわけだ。それでなにをしようというんだね」
「残念ながら、ぼくは人前で話すのは苦手ですし、多くの人を集めて何かをするだけの人、時間、お金もありません」
「うーん、そうなるとやはり...。文字か絵か」
「そうですね。そのどちらかを使ってそれを見たり読んだりした人が、明るい気持ちになれば...。例えば、こんなのは
 どうでしょう」
「いや、今日はやめとくよ。君の自信作ができたらいつでも聞くから。ただ、中傷や品のないのはやめてほしい。
 卑猥なやつは大好きだが、趣旨に沿わないからこれもやめておいてほしいな」
「よくわかりました。橋本さんが何回も思い出し笑いをするような傑作を考えます」
「そうだね、私は昔、深夜放送を聞いていて大声で笑いたくなった時があった。夜中に大声で笑うわけにはいかず、頭の
 筋肉が引きつるのを我慢して涙したものだった。大爆笑を心置きなくしたい気もするが、君が言う静かな笑いというのを
 楽しみにしているよ」