プチ小説「友人の下宿で15」

「本日もお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今日は、ヴァイオリンの小品をお聞きいただく
 ということです。それでは、高月さん張り切ってどうぞ」
「今日は、まずパガニーニの24の奇想曲と「クレモナの栄光」というレコードを聞いてもらってから、僕の
 好きな別のヴァイオリンの小品をお聴きいただこうと思っています。まずはパガニーニの24の奇想曲から。
 24曲の奇想曲(カプリース)から構成されており、「ヴァイオリンという楽器のもつ可能性をその1曲1曲で
 極限まで追求した作品」と言われ、特に第24番は有名です。独奏ヴァイオリンの音色が刺激的なこの曲を
 のんびりと最後まで楽しめるようであればクラシックファンに成れるだけの素質はあると思います。演奏は
 イツァーク・パールマンです」

「次にお聞きいただくのは、小品ばかりを集めた「クレモナの栄光」というアルバムです。演奏しているのは
 ルッジェーロ・リッチとレオン・ポマーズですが、このアルバムの面白いのはヴァイオリンの歴史的名器を15本
 使って15曲を演奏しているところです。しかも心に残る名曲ばかりです。僕のは日本盤なのですが、音のよい
 外国盤であれば、目の前でストラディヴァリが製作したヴァイオリンが演奏されているような心地よい音に
 浸れることと思います。でもお掛けするレコードでも結構楽しめますので、お楽しみに。では、どうぞ」

「それでは最後にヴァイオリンの小品をいくつか。最初にお聴きいただくのは、先程の「クレモナの栄光」にも
 入っていた曲ですが、パラディースのシシリエンヌです。パラディースは5才で失明した女流ピアニストで
 モーツァルトのピアノ協奏曲第18番はこの女性のために作曲されたと言われています。とにかくこの曲は
 ナタン・ミルシテイン他の演奏がすばらしいので、是非お聴き下さい。次にフィビヒの詩曲をギドン・クレーメル
 他の演奏で、そして最後はマイケル・ラビンの演奏でサラサーテのツィゴイネルワイゼンとサン=サーンスの
 序奏とロンド・カプリチオーソです」

「百田どうだった」
「うーん、ヴァイオリンもいいね。最近、オペラが多くて器楽曲が好きな連中が敬遠していたけれど、次回は
 連れて来ようかな。順番待ちの友人が20人程いるんだ」