プチ小説「青春の光6」
「こんにちは、橋本さん、今いいですか」
「今から少し休憩を取るところだから、何でも相談してくれ」
「実は、この前言っていた、静かな笑いの件ですが...」
「休憩中だが、そのことなら手短に頼む。真っ昼間に警備員が仕事のことを忘れてげらげら笑っていたんでは...」
「そう思って今日は余り深くは立ち入りません。ほんの少しの時間だけ耳を傾けてもらえれば...」
「と言うと...」
「今日は、本文ではなく、言わば見出しだけなので...。つまり、イマジネーションを喚起するような面白い小説の
タイトルを考えてみたんです。でも、よろしければ」
「よろしい。聞こうじゃないか」
「では、まずこう言うのはどうでしょう。「デビルフィッシュの謎」」
「それはどんな内容なのかな」
「あらすじしか考えていませんが、ある大学の先生がロンドンを旅している時に「デビルフィッシュの謎」に行き当たる
という話です。ではその内容ですが、ある大学の先生が汽車に乗って遠出をすることにしました。この先生は日頃から
いかくんでお酒を飲むのが好きでその日も汽車の席に着くとすぐに一杯やりはじめました。次の駅に着くと婦人とその
二人の子供が乗車して来て彼を取り囲むように座りました。先生が旨そうにいかくんを食べるのを見て、子供たちは
それを欲しがり気前のよい先生はそれを躊躇せず子供たちに与えました。子供たちはあまりにも美味しかったのと
今までに見たこともないような変わった食べ物だったので、「これは何?」と尋ねました。先生が、「烏賊だよ」と
答えると子供たちは口を揃えて言いました。「オウ、デビルフィッシュ、オウェー」そこで先生はぽんと左掌を右の拳で
軽く叩いて、そうか長年の謎が解けたぞ、これを学会で発表するか、飲み会で話すネタにしようと思ったのでした」
「うーん、それだと65点くらいだな」
「そうですか。他にも、いくつかあって、タイトルだけでも言っておきたいんですが」
「いいよ。どうぞ」
「「爪に点すともしび」、「靴下の穴は直径5センチ」、「毎日卵ばかりでは精がつきすぎるなぁ」」
「うーん、それはいわゆる、貧乏ネタと言われるものだが、路線としてはさっきの方がいいと思う。だから60点以上は...」
「なかなか厳しいなぁ。では、「たこやきと通天閣とけつねうろん」ですが...」
「関西風のだしのきいたよい作品になりそうだが...。そろそろ時間だ。「オウ、デビルフィッシュ、オウェー」は思い出し笑いを
しそうだな...。ははは」