プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 古都京都編」

わしは生まれてからずーっと大阪の北摂地区に住んどるんやが、ひとりで京都に行ったんは、高校を卒業して浪人生になってからやった。高校の頃、訪ねた法然院にもう一度行きたくなって、銀閣寺から哲学の道を経由して法然院まで行ったんやった。それまでは京都に対してこれといって惹かれるものはなかったんやが、銀閣寺のよく手入れされた庭、哲学者西田幾多郎が散策した道そして静かな法然院の境内が浪人生の苛立った気持を和らげてくれて、それからは癒しを求めてたまに訪れるようになったんやった。京都は名刹と呼ばれる寺が数多あるんやけど、わしが行ってみてええなあと思うたのは、法然院の他には、大徳寺の塔頭龍源院、龍安寺、三千院、常寂光寺、建仁寺、圓通寺それに西芳寺くらいや。大きなお寺は見どころが多い分、観光客が多いから、落ち着いて見学ちゅーわけにいかんから、どうしても印象としてはうすいものになってしまうみたいや。平日の朝一番に行って、ゆっくり見て回ったら、ええ印象が残るんかもしれんけど、それはこれから10年先のお楽しみや。最初の頃、わしはお寺の主役は建物で、金閣寺の金閣、銀閣寺の銀閣、東寺の五重塔、永観堂の多宝塔、清水寺の本堂(清水の舞台)が主役なんやと思っとった。ほやけどいくつかの寺を訪れたら、やっぱり、お寺の主役は庭園で、庭園の中でその建物がいかにうまく調和してすばらしい景観を見せているかちゅーのが、大切なことやちゅーのがようわかったんや。庭園では、龍安寺が有名やけど、龍源院や法然院の庭園もすばらしいから一回行ってみーと言いたいところや。船場は、一時、ホームページに掲載するからと京都のお寺をようけ訪問していたらしいが、最近はどうしてるんか訊いてみたろ。おーい、船場ー、おるかー。はいはい、にいさん、「エルマリート21の世界」のことですね。なんや、そのえらいすんまへんなちゅーのは。どう聞いたら、そんなふうに聞こえるのかわかりませんが、そのページに大量のお寺の写真を掲載するために頑張っていました。ほうか、いましたちゅーことは、最近はやっとらんのかいな。山登りと同じように本の出版や小説を書くことで忙しくなったので、行かなくなりました。それに行きたいお寺はほとんど行きましたし。写真の掲載は許可を得てと考えていたので、許可を得るために住職さんと話をしたりしました。このページを始めた目的は、ライカのレンズエルマリート21ミリの機能を生かして、狭い空間でも歪みのないきれいな写真を撮ろうとしたのです。このページに龍安寺の写真が出てきますが、50ミリで撮影したら石庭の半分しか写らないのに、エルマリート21を使うと石庭のほぼ全景が移るのです。このページはそのあたりのことができたので、もう充分かなと思ったのです。そやけど一旦始めたんやったら、京都のお寺をエルマリート21で全部写すでえぇぇぇぇちゅー意気込みがほしいなあ。船場、お前、山登りも奥穂高岳、前穂高岳に登っとらんし、こっちも中途半端のままで終わっとる。こっちはどうするつもりなんや。今のところ、いろいろとやることがありまして、山登りや写真はまだまだ先になりそうです。穂高はここ数年で登らないと登れなくなると思いますが、トレーニングで時間が取られるので、やりたいことがある限りは無理でしょうね。それに7年登って、4日続けて晴れたことがないのですから、準備万端整っても、雨に泣かされることもありますから、そこまでして登るかです。なるほどそやなあ、ほたら、あんたのやりたいことを一所懸命やったらええんとちゃう。