プチ小説「たこちゃんの改訂」

リヴィジョン レヴィシオーン レヴィシオンというのは改訂のことだけど、2011年秋に出版された自著『こんにちは、ディケンズ先生』の改訂版が、11月29日に大手出版社から出版されることになっている。『こんにちは、ディケンズ先生』は、2011年の正月から秋にかけて、ぼくと近代文藝社の担当者がふたりで奮闘して作り上げたものなんだけど、ぼくがずぶの素人で編集者も若かったため(いろいろしていただいたが)統一性(僕とぼくが混在しているなど)がなかったり、表現に問題があるところもあった。今回は大手出版社なので、校正も厳しく、多くの手直しをして改訂出版することになったんだ。ただ多くのぼくの若気のあやまちがあるとは言え、2011年版もフレッシュなイメージががあるので、これからも大切にしたいと思っている。大好きな文豪ディケンズとぼくの心を豊かにしてくれたクラシック音楽への感謝の気持ちを込めての出版だったが、今のところたくさんの人に読まれていない。しかし出版を切っ掛けにして、ディケンズ・フェロウシップに入会し、雲の上の人だった大学の先生や翻訳家の方と知り合いになることができた。また表紙絵や挿絵を描いてくださった小澤一雄先生の個展に毎年1回訪れ、励ましの言葉をいただいている。100余りの大学図書館に受け入れていただいてるが、公立図書館は直接担当者にお会いして渡そうと東京23区、名古屋市、さいたま市、千葉市に何度も足を運んだだけでなく、北海道から九州までの各地の公立図書館を訪ね歩いたのは楽しい想い出なんだ。これからカバーデザインの提示があったり、最終チェック(念校ゲラを経て)に至るまではしんどいながらも楽しい作業が続くが、大手出版社の担当編集者の方とはこれからもずっと、なるべく長くのおつき合いできるようにと願っている。それから近代文藝社の方々にはいろいろお世話になりましたと感謝の気持ちを表したいと思っている。駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手は、スポーツ紙の予想欄ばかり見ているが、文芸書などを読むことがあるのだろうか、そこにいるから訊いてみよう。「こんにちは」「オウ ブエノスディアス ソーロピエルデスエルティエンポアシエンドエソ」「ええっ、駄目なんですか」「そら、そうやがな、わしはどうでもええけど、いちびりのおっさん、橋本さん、田中君なんかも、あんたが創作した人物とは言え、あんたのため一所懸命頑張って来たんや。そういった人たちにも感謝の気持ちを持たんのやったら、不十分と言うもんや。もちろんわしらなんかより、船場はんの家族や職場の人はもっと大切にせなあかん思うんや。それはさておきやな、改訂版が出たら、どうしようと思うとるんや」「とにかく『こんにちは、ディケンズ先生』の改訂版が売れないことには、その先の話はないでしょう。ですが、売れれば、第2巻の改訂版の出版となります。第2巻の改訂版も好評ということになれば、既に原稿が上がっている第3巻、第4巻の出版となるでしょう。第5巻はまだ原稿が足りないので、さらに出版できるとしたら、既に書かれているプチ小説やプチ朗読用台本からの出版ということになるでしょう。鼻田さんだけでなく、いちびりさんや橋本さん、田中君の出てくるプチ小説も出版したいと考えています。プチ朗読用台本は、前口上を書き直し全体を見直して出版できればと考えています。プチ朗読用台本の「ミコーバの爆発」や「カートンの愛情」を朗読会で読んでいただくなど親切にしていただいた故荒井良雄先生のご遺族のご了承が得られれば、プチ朗読用台本にそのCDRを付けさせていただこうかなと考えています。「こんにちは、ディケンズ先生」はぼくのライフワークですので、これからも続けますが、折を見て、文化の中心である東京中心の生活を始めたいと思っています。高齢の家族がいるので、週末には関西に帰って来ることになるでしょう。東京ではディケンズ・ファンあるいはクラシック音楽・ファンのいろんな方との交流がしたいですが、「こんにちは、ディケンズ先生」とLPレコード・コンサートは接点となると思います」「そのLPレコード・コンサートはどうするつもりなんや」「第100回までは続けるつもりです。今のペースで行けばあと8年後ですが、最近はリピーターの方も多いので、この方たちとの交流も大切にしたいと思っています」「よっしゃ、わかったでぇぇ。けどな、それまでは体力を鍛えとかなあかん。今からわしと一緒にうさぎ跳びやらへんか」「ええ、ぜひお願いします」そう言って、ぼくと鼻田さんは鼻田さんのタクシーの周りをうさぎ跳びでぐるぐる回ったのだった。