プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 子供はかわいい編」
わしがちいこい頃は、父親と母親が親戚づき合いを大切にしていて、休日や夏休みに親戚の家へ出掛けて行ったもんやった。親戚は大阪府内と岡山県内にあったけど、小学生やった夏休み毎に訪れた父親の故郷の岡山でやったことは今でもよう覚えとる。おじさん、おばさんとその息子がわしらのためにもてなしてくれたからで、三男が近くの川に連れて行ってくれて一緒に泳いだり、おじさんが神庭の滝や井倉洞に連れて行ってくれたもんやった。わしが社会人になった頃、恩返しがでけんかなと思うて、岡山県の親戚の家を訪れた時に、丁度その頃、小学校に入った長男の息子を連れて津山市内に出たもんやった。ほやけどそれくらいの子供を喜ばせるのが何かわからず、とりあえず、鶴山公園の中にある動物園(2011年廃園)へ行ったもんやった。いまいち喜びが少ないなあと感じたわしは、わしが興味をもったということもあって、動物のはく製が800種類あり化石や鉱物の展示コーナーがあるっちゅーつやま自然のふしぎ館にその子を連れて行ったもんやった。結局、そこでも余り楽しそうやなかったんやが、衆楽園(日本庭園)に入って池の鯉がぎょうさん集まって来よるのを見てその子が大はしゃぎしていたのをよう覚えとる。まあ知的好奇心旺盛ちゅーわけやない普通の子供は目の前で起こっとる面白い出来事に敏感に反応するみたいやから、暗い檻の中の隅っこの方におるライオンや10メートル四方位の空間に100体ほどのはく製が並べられていても、わしは目の玉が飛び出るほど驚いて感動したんやが、なーんも感じんのかもしれん。そやけどそれからしばらくして妹の娘二人をもてなす時にこの経験が生かされたんやった。まあ、一番手っ取り早いのは遊園地に行くことやと。それで京都の比叡山山上遊園地(2000年閉園)と八瀬遊園(1982年頃廃園)をはしごしたり、ポートピアランド(2006年閉園)に行ってみたり、玉手山遊園地(1998年閉園)と生駒山遊園地のはしごをしたりした。ふたりはおおはしゃぎやったが、出費もかなりのもんやった。それでもめぐりめぐって親戚の子供を可愛がるちゅーことに繋がったらええと思うとるんや。船場は趣味のことばかりやっとって独身貴族やから、わしみたいな発想は持っとらんと思うんやが、あいつ何か最近、様子が変や。何で変なんか訊いてみたろ。おーい、船場ー、おるかー。はいはい、にいさん、私がいつもより変やちゅーことですね。ほっといてください。でも、11月29日に私の本が出版されるので、それでそわそわしているのかもしれません。ほう、そうなんや。そやけどもう2冊出版しとるんやから、特に目新しいもんはないんとちゃうんか。そうですね、特に違った作業をする訳ではありません。校正や表紙絵の選定などは以前と変わりません。でも今度は大手出版社からの改訂版ということで、いわばメジャーデヴューということですから、出来るだけのことはしておこうと思うわけです。また大きな期待をもっているわけですから、出版社からお声が掛かれば万障繰り合わせして駆けつけようと思っているのです。そして何より自分には子供がいないので、自分の創造した書物が多くの人に受け入れられ、次を期待される方が現れ、より多くの私の創作したものが世間の人に可愛がっていただけるよう願うわけです。なるほどなあ、船場の子供みたいな『こんにちは、ディケンズ先生』の先行きがどうなるか気になってしゃーないちゅーことやねんな。ほたら、やり残したちゅーことがないように年内は頑張りや。もちろん、そのつもりです。