プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 ディーリアス編」
わしがちいこい頃の卒業式で歌われとった曲は、森昌子さんが「中学三年生」で歌っとるように「蛍の光」やった。「蛍の光」を知った頃から、何でか知らんが、なーんでかしらんが、オーレーッ、イギリス民謡(スコットランド民謡、アイルランド民謡)が好きになって、「グリーンスリーブス」「春の日の花と輝く」「ロンドンデリーの歌」「埴生の宿」「庭の千草」なんかを聴いたもんやった。浪人時代は作曲者自らが指揮するブリテンの「青少年のための管弦楽入門」が好きになって、レコードを買い求めたもんやった。この曲は柴田南雄氏が曲の解説をされとった、民放FMラジオのクラシック番組のテーマ曲やった。それからしばらくしてジンバリストがピアノ伴奏で演奏するエルガー「愛の挨拶」が好きになって、エルガーの名曲をいろいろ聴いてみたりもした。やっぱり有名なんは威風堂々第1番やが、デュ=プレがチェロを弾くチェロ協奏曲もなかなかええ曲や。他にも、ヴォーン・ウィリアムズが作曲した「トマス・タリスの主題による幻想曲」も名曲やと思うが、わしが一番よう聴く作曲家は、ディーリアスや。今から40年ほど前に週間FM(FM fanやったかもしれん)に出谷啓氏がディーリアスの名盤を紹介しているのを見て、すぐにバルビローリとビーチャムのレコードを2枚ずつ購入したもんやった。バルビローリは「アパラチア」と管弦楽曲集の2枚やが、「アパラチア」はバルビローリが死の直前に録音した、いわゆる白鳥の歌や。管弦楽曲集は歌劇「ハッサン」より間奏曲とセレナード、「去りゆくつばめ」なんかの名演が入っとる。一方ビーチャムの方は、「フロリダ」組曲と管弦楽曲集や。ビーチャムの「春初めてのかっこうを聞いて」は何度聴いても涙が出てきよる。これはわしが年を取ったからなんかなと思う。それからバルビローリは歌劇「村のロメオとジュリエット」から「楽園の道」の名演を残しとるが、これはいかにもイギリス音楽ちゅー感じのええ演奏やから老若男女を問わず誰にも愛されると思う。船場はクラリネットのレッスンで知り合って現在、中国上海で活躍されている人や最近いろいろお世話になっている出版会社の人からプログレッシブ・ロックを紹介されて聞いとるようやが、どんなン聞いとるんか訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、にいさん、堺すすむさんのなんでかフラメンコのことですね。ちゃう、ちゃう、わしも堺すすむさんは好きやが、今、わしが言うとるのは、プログレッシブ・ロックのことや。オーレーッ。そうですか、クラリネットのレッスンで親交を持っている人からは、イエス「危機」、エマーソン、レイクアンドパーマ「タルカス」がいいと聞き、CDを買って愛聴しています。出版会社の人からは、キング・クリムゾンとブライアン・イーノがいいと聞いたので、キング・クリムゾンは「クリムゾン・キングの宮殿」「アイランズ」「太陽と戦慄」「レッド」「ディシプリン」「ビート」を一度に購入しましたが、いまいち聴けていないというところです。もっとじっくり聴きたいと思っています。ロバート・フリップがいろいろ試みているようですが、ぼくの音楽的な素養が追いつかないといったところでしょうか。ブライアン・イーノはぼくにとってはさらに難解で、アンビエント・ミュージックと言われても、何のことかわからず、アイヴァン・オールセット等と一緒に作った”wagner
transformed"というアルバムをたまに聴くくらいです。出版会社の人との親交が深まれば、ブライアン・イーノの音楽の楽しみ方について教えてもらえるかもしれません。でも、クラシックで言う十二音技法や無調音楽であれば理解できないかもしれません。お前の言うことはさっぱりわからん。あんまり無理せんとディーリアスを聴いとった方がええかもしれんよ。ディーリアスは1862年生まれで、1843年生まれのグリークと仲良しやったようや。生年はドビュッシーと同じやが、メロディー重視のところはグリークに似とると思う。晩年難しい音楽をこさえたドビュッシーとは全然違う作曲家やと思う。まあ船場はあんまり背伸びせんと「グリーンスリーブス」「春の日の花と輝く」「ロンドンデリーの歌」「埴生の宿」「庭の千草」なんかの古(いにしえ)の名演をきいて涙を流すのが、ええんとちゃうんかな。そうかもしれませんね。