プチ小説「たこちゃんのグルメ・リポート2」

ぼく、たこちゃん。美味しい食べ物に目がない50代のおじさんなんだ。前回は庶民の食べ物餃子だったけど、今回は創業300年の伝統がある京料理のお店に行った話をしようと思うんだ。ところでみんなはお芋って好きかな。ぼくは大好きなんだ。この前、職場の宴会で、フライドポテトやサツマイモの天婦羅が出て、美味しく食したんだけど、素材の旨さが決め手になるから、一口食べてこれはだめだなと思うことも屡々ある。また話は変わるけど、今から20年前にラジオで、山形県では9月頃に川べりで、その年にとれたサトイモ、ジャガイモ、ネギと牛肉を大鍋で煮て、近くを通りかかった人に振る舞うという芋煮会という行事があるのを知った。それからしばらくしてテレビのニュースで、日本一の芋煮会という豪快な行事が山形市内の川べりで行われているのを知った。大きな鉄鍋に具材とだし(しょうゆ味とみそ味がある)を放り込んで、煮込んで、出来上がったのを振る舞う(有料)んだけど、ぼくは、そのニュースを2、3年続けて見て、いつか参加したいなと思った。そうして意を決して参加した。日本一の芋煮会に参加するために(山形市内でそばもいただいた)大阪から夜行バスで12時間ほどかかったけど、十分それだけの価値はあったと思う。大きな鉄鍋で煮込まれた選り抜きの具材はとても旨かったことを今でも覚えている。旬のサトイモも美味しいけれど、京野菜のエビイモと棒鱈を甘辛醤油でじっくり煮込んだいもぼうは一度食べたら虜になるおいしさなんだ。といってもぼくは今までお店(いもぼう 平野屋本家)には、3度しか行ったことがない。最初に行った切っ掛けは今から13年ほど前に同じ職場で働く私より10歳ほど上の女性に、京料理の安くて美味しい店はないですかと尋ねたことだった。その女性は、私の親戚がやっているお店ですけどと言われ紹介していただいたので、おすすめ料理の知識もなくその店に行ったのだった。もちろんエビイモの知識もなかったから、ただ京料理を食べたという記憶しか残っていない(季節によってはエビイモがないため、サトイモで代用することもあるらしい)。2度目に訪れたのは今から1年ほど前だった。この時もエビイモの知識はなかったけど、エビイモを食べて、その味の虜になったんだった。昨日、そのお店を訪れ、月御膳というのをいただいて、エビイモの美味しさを再認識したのだった。エビイモの味を引き立てているのは、棒鱈だと思う。それに繊細な味付けのしょうゆだしもとても美味で、祇園豆腐、コンニャクの白和え、すまし汁(しいたけ、かまぼこ、卵焼き入り)、すぐき、昆布の佃煮なんかと一緒に美味しいごはんでいただいた。全部で2600円ほどするので庶民の晩餐としては高くつくけど、一年に一回くらいは奮発して美味しい京料理を京情緒たっぷりの店で味わってみるのもいいと思う。円山公園の枝垂桜から100メートルも離れていないのだから、八坂神社の山門を入って夜店を見たりお賽銭を入れて願掛けしてから、店に入るというのもいいんじゃないかなと思う。