プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 J.S.バッハ編」
わしがちいこい頃、わしの両親は自分の子供に少しは音楽的な才能があると思ってか、電子オルガンを購入してくれた。90×30×20の木の箱に50センチくらいの鉄製の足が4本生えたようなやつやった。昔の小学校には鞴式のオルガンがあって懐かしい音がしたもんやったが、あれを電動式にしたような、音も一種類しか出んやつやった。それで一所懸命、オルガンの曲を弾いていたら、J.S.バッハ(以下、バッハ)のような音楽家になっていたかもしれん。そやけどわしはあかんたれやった。勉強も、スポーツも、音楽も中途半端やった。ちゅーと半端やなというギャグがあるけど、わしはそれを聞くと頭を抱えて、それわしのことでっか。すんまへんなぁと呟いてしまう。それでも社会に出て、いろんなもんが購入できるようになると、もうその電子オルガンは引越しする時に処分していたので、色んな音が出せるキーボードを購入した。クラリネットやトランペットの音も出せて面白かったんやが、楽譜を見て1曲通して弾くということはなかった。やっぱり、もとから才能はなかったみたいや。そうそうバッハちゅーたら、多くのクラシックの音楽家にとって神様みたいな人やから、わしもオルガン曲を初め、いろんな曲を鑑賞してきた。ケーテンで宮廷楽長をやってた頃に管弦楽曲、室内楽曲や独奏曲を作曲しとって、その頃の曲がわしは好きや。ブランデンブルク協奏曲、3つのヴァイオリン協奏曲、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、無伴奏チェロ組曲なんかがわしは好きやな。ブランデンブルク第4番の出だしや無伴奏チェロ組曲第1番の出だしは心弾むもんやし、2台のバイオリンのための協奏曲の第2楽章は天国に登って行くような気になる超美しい音楽や。それから無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番のシャコンヌはヴァイオリン音楽の頂点と言える素晴らしい音楽や。バッハの音楽は余りに完璧過ぎるので、敬遠する人もおるようやけど、美しい旋律が泉のように出てきよるし一遍じっくり聴くと虜になるのは間違いない。船場も、バッハの音楽のファンのようやが、わしの知らん名曲を知っとるかもしれん。最近、11月29日に『こんにちは、ディケンズ先生 改訂版』を出版するからちゅーて忙しそうにしとるけど、どないなんやろ。船場ー、おるかー。はいはい、にいさん、出版が近いですが、校正などは終えていますし、出版で忙しいということはありません。バッハについては、今、『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』礒山雅著というのを読んでいて、『マタイ受難曲』礒山雅著と並んで、とても参考になる本です。これらを読むとバッハがいかに真摯に音楽に取り組んでいたかがわかります。それでお薦めの曲はあるんかいな。やっぱりルター派の熱心な信者であったバッハの宗教音楽は素晴らしいと思います。とっつきにくいと思われている方は、カンタータ140番と147番をアーノンクール盤で聴いてみてはどうでしょう。テルツ少年合唱団のアラン・ベルギウス君が活躍するレコードやろ。あれはええなあ。それで慣れたら、「マタイ受難曲」に挑戦してみてください。やはり定番のリヒターの1958年盤がいいと思います。器楽曲ではええのんはないんか。まずは、トッカータとフーガ二短調を初めとするオルガン曲でしょう。その次はピアノで奏されることが多い、クラヴィーア曲集でしょう。リヒテルの平均律、グールドのゴールドベルク変奏曲、グルダのイタリア協奏曲なんかがお薦めです。それから管弦楽曲では、管弦楽組曲第1番、第2番がお薦めです。G線上のアリアが入っとる第3番はあかんのか。そうですね、G線上のアリアは際立って良いのですが。他にも「音楽の捧げもの」や「フーガの技法」がありますが、ぼくはしばらくはバッハが心を込めて作曲した、ワイマール時代のカンタータをじっくり聴いてみたいと思います。わしも「マタイ受難曲」をリヒター盤で聴いてみるわ。