プチ小説「たこちゃんのグルメ・リポート11」
ぼく、たこちゃん。美味しい食べ物に目がない50代のおじさんなんだ。家庭料理の代表格におでんがあるが、ぼくも高校生の頃までは母親がよく土鍋で料理してくれて、家族みんなで炬燵の上に土鍋を置いてコンニャクやちくわや厚揚げをつついたものだった。家庭で普段食べられる料理だったので、外食でわざわざ食べようと思ったことはなかった。それでも30才を越えてからさつま揚げやだいこんの醤油煮などの煮物が大好きになり、自分で作ってみたり、おいしい🍢だねを探し求めたりするようになった。今から10年程前に阿佐ヶ谷のパールセンター商店街にある蒲重蒲鉾店で🍢だねを大量に買って自宅に発送してもらったことがあった。しばらく練り物ばかりの🍢の日が続いたが、その時に感じたのはやはり🍢には、ダイコン、コンニャク、タマゴ、厚揚げ、豆腐は欠かせないということだった。ダイコンと言えば、京都千本釈迦堂の大根焚きが12月に毎年行われるが、いつもニュースを見て、ああ行ってみたいなあと思うが、しばらくすると忘れ、翌年も同じように行きたいなあと思ってすぐに忘れている。きっとこの流れは一生続くことだろう。ぼくの妹が白山市に住んでいて、5年に一度位金沢を訪問するけど、ある時おでんが食べたくなって、妹とおでん高砂に行ったことがあった。20年程前のことなので、はっきり覚えていないが、だしが美味しかったとか🍢だねに美味しいものがあったという記憶はない。それは客が飽きの来ない家庭料理のような味を求めるからだと思う。それでも奮発してカニのおでんを注文していたら、有難く食べていただろうから、記憶に残ったことだろう。40才を越えた頃からおでんを食べることがほとんどなくなっていたが、最近、紀文からおでんシリーズ(これはぼくが勝手に名前をつけた)が出て、それを食べていたら、またおでんが食べたくなった。そうは言っても、おでんは日本酒の熱燗などのお酒が欠かせないから、自称下戸のぼくにはおでん料理を食べられる店に行くのは難しい。そこで出来上がった熟年男女がわんさかいる午後6時以降にはおでん屋に入らないようにする方法はないかと考えたんだ。インターネットで検索して、2つのお店を選んだ。ひとつは十三にある平八、ここは午後2時40分から開店しているので、休日を利用すれば、目的を果たすことができる。もうひとつは阪急高槻市駅から2分程のところにあるとん平、ここは午後5時から開店するので土曜日に行くのがいいと思った(うちの職場は第2、第4土曜日が半ドンなんだ)。まず平八なんだけど、ぼくはおでんだけが目当てだったので、店に入ってそこにいた女性(のちに女将さんとわかった)に、ぼくはおでんだけが食べたいと言った。すると、いいですよと言って、店の奥のカウンター席に案内してくれた。ぼくの隣にはまだ開店10分だというのにすでに出来上がって、呂律の怪しいおじさんがふたりの女性に話し掛けていたんだ。ぼくはそれを気にせず、おでんとソフトドリンクを頼んだ。結局、そこに40分ほどいて、おでんと串カツをお腹いっぱいになるまで食したが、おでんの味はまあまあといったところだった。むしろ平八は串カツが美味しいと思った。3,830円と結構かかったが、おでんと串カツを堪能できたのでよかったと思った。つぎにとん平なんだけど、こちらは前々日の午後7時半頃下見に行ったんだ。もしかするとその時間には客が途切れるんじゃないかと思ったんだが、入口の引き戸(自動扉)が開くと鈴生りの果実のようにぎっしり埋まった座席に座った客が一斉にこちらを向いたので、店主らしき人に、ひとりなんですが開いてませんねと言って慌てて外に出たのだった。そういうことがあったので、土曜日の仕事を終えて、時間を潰して、午後5時15分頃とん平に入った。カウンター席が10あって、そのうち8つは埋まっていた。他はテーブル席が4つあったが、いずれも予約席の表示があった。ぼくは奥の席に座り、お酒は飲まないでおでんだけを食べたいと言って、40分程ウーロン茶を飲みながらおでんを食べた。ダイコン、タマゴ、厚揚げ、平天、タコ、ゴボウ天、ちくわ、コンニャク、イトゴンニャク、豆腐、ジャガイモ、子芋、タケノコ、ひろうすを食べたが、だしが美味しくお腹いっぱい(3,270円)食べてしまった。となりのおばさんも、美味しい、美味しいと言って、だしを飲んでいたので、ぼくも真似をしたんだった。そんなわけで、平八ととん平はまた行こうと思うが、食べ過ぎないように注意しようと思う。