プチ小説「たこちゃんのグルメ・リポート13」

ぼく、たこちゃん。美味しい食べ物に目がない50代のおじさんなんだ。安くて美味しくて満腹感がある料理の最右翼はぼくは豆腐だと思っている。ただ豆腐を味わうには2つの要素が不可欠だと思っている。ひとつは美味しい調味料と新鮮な刻みネギだと思う。ぼくが好きな豆腐料理は湯豆腐、揚げ出し豆腐、麻婆豆腐なんだけど、湯豆腐は醤油、揚げ出し豆腐はだし醤油、麻婆豆腐は麻婆ソースがよしあしのすべてを決めると思うんだ。もちろん煮過ぎた豆腐や冷凍ネギなんてのは論外なんだけど味付けが薄かったり、甘ったるいと食べる意欲がなくなってしまう。30年ほど前にある居酒屋で煮込みすぎてたくさんのすが入った豆腐を見て最後まで手を付けなかったのを覚えている。すが入った豆腐はそれほど食感も味も劣化している。噛むと豆腐の中のお湯がじゅーっと沁み出して味を損なってしまう。湯豆腐は煮込み過ぎないことと味の素の本だしを入れ忘れなければ、豆腐と刻みネギで美味しく食べられるが、ハウスの一味を八幡屋礒五郎の七味に変えると一味変わったものになる(ただしぼくはどっちも好きだけど)。揚げ出し豆腐はスーパーで買うもので充分だが、ネギを加えると美味しくなる
。麻婆豆腐のソースは丸美屋の中辛レトルトソースが一番美味しいと思う。細かいことを言うと、添付されてあるとろみソースを水で溶かしてまんべんなくふりかけて、だまになったりしないようにすることが大切なんだ。それからシイタケやタマネギを入れると美味しいからお勧めなんだ。今から30年ほど前に京都の順正で湯豆腐を食べたことがあるけれど、その頃はまだ若かったから、値段の割に食べごたえがないなあと思っただけだったが、久しぶりに京都で湯豆腐を食べてみたいと思って、清水寺の近くにある清水順正おかべ家に行って来た。30年前に昼食で食べた湯豆腐のセットメニューでは物足りないと思い、昼食時は混むだろうと思ったぼくは午後5時の閉店直前に行くことにしたんだ。南座の前まで来たとき腕時計を見たら、午後4時25分だったので、そこから速足でおかべ家さんに急いだのだった。閉店15分前に到着したが、思惑通りにお客さんが少なかった。湯豆腐だけだったら、840円で食べられるが、それだけでは寂しいので、3,240円の「桜」コースを頼んだんだ。湯豆腐も美味しかったけど、野菜天ぷら、とうふ田楽、煮物、ごま豆腐、ゆば造り、茶碗蒸し、豆ごはんも美味しくて、お腹も一杯になった。もちろん薬味のネギも美味しかったけど、山椒の香りがとてもよい七味も湯豆腐の味を引き立てた。麻婆豆腐は蒲田で激辛のものを食べ涙がなかなか止まらなかったんでしばらく食べたくないが、京都の湯豆腐は美味しかったので、他の店にも行ってみたいと思うんだ。なぜなら京都の街角のそこかしこでお手製の湯豆腐のお店の看板を見るんだから。(立命館大学近くのわらという店に是非一度行ってみたい)