プチ小説「K氏によるつまびらかな説明」

私は、20年来のライカ愛好家である。それまで使っていたオリンパスOM1で撮るカラー写真の色合いに物足りなさを感じ、中古のM6と35ミリのレンズを購入したのだった。撮った写真の色合いが秀逸で、OM1とM6がほぼ同じサイズで手に馴染んだこともあり、M6を購入してからは他のカメラは使わなくなった。レンズもズミクロン50ミリ、沈胴式50ミリ(赤エルマー)、沈胴式90ミリ、超広角レンズエルマリート21ミリを購入した。この愛機で槍・穂高の写真や京都のお寺の写真を写したが、銀板カメラなので、お店でフィルムを現像してもらって焼き付け、写真をスキャナで取り込むという手間が必要なため、ライカのデジタルカメラが気になり出した。M8以降がデジタルカメラになるが、ライカM8以降の解説書、雑誌がなく、インターネットで調べても思うような情報が得られないので、銀座に出掛けることにした。銀座にはライカの直営店が2つあり、ライカのカメラとレンズを数多く取り扱うカツミ堂写真機店がある。しかしインターネットで調べると大丸東京店の10階にライカの直営店があることがわかったので、新幹線で東京に着いたらまずその店を訪ねてみることにした。開店後すぐに店頭に直行し店の中を覗くと男性と女性が一人ずつ正面のカウンターにいた。私が中に入って、デジタルライカに興味があります。新品を購入するわけではありませんが、相談に乗っていただけますかと尋ねると、左側の男性が、ええ、もちろんと言われた。
「今までM6のユーザーでレンズは、ズミクロン35ミリ、ズミクロン50ミリ、沈胴式50ミリ(赤エルマー)、沈胴式90ミリ、超広角レンズエルマリート21ミリを持っています。まずお伺いしたいのは、M6で使用してきたレンズをM8以降の機種で使用できるかということなんですが」
「もちろんできます」
「M8以降は自動焦点用のレンズではないのですか」
「いいえ、ライカのMシリーズで自動焦点の機種はありません。今まで通りにMシリーズのレンズが使えます」
「沈胴式の赤エルマーはスクリューマウントですが、使用は可能ですか」
「可能です。ただ沈胴させるとデジタルライカはカメラ内の部品を傷つけるので、伸ばしてから取り付けてください」
「M9がほしいのですが、M8にも興味があります。M8は画面がフルサイズでなく、補正フィルターが必要、シャッター音が大きいという問題点がありますが、どう思われますか」
「サイズはそれほど気になりませんが、シャッター音が大きいのは気になります。周りの人がわかるような大きな音です。赤外線が移り込み赤っぽくなるので、フィルターは付けた方がいいと思います」
「M9もセンサーに不具合があると言いますが...」
「すべて交換しないと使用できないというわけではありません。黒っぽい影が写るようになったら、修理に出せばいいと思います。メンテナンスという形になりますから、修理費は10万円余りになります。ただ当社もM9の中古品を取り扱っており、当社で販売するM9についてはすべてセンサーのその部品は新しいものに交換済みです」
「M9の価格はどのくらいでしょうか」
「中古で60万円くらいでしょうか。銀座の店か京都祇園の店で詳細については確認してください」
「記憶媒体やファイルについてはどうですか」
「記憶媒体はずっとSDカードです。8GBのSDカードの場合、Jpegで160枚くらい撮影できると思います。コンピュータにSDカードを差し込めないMacなどの場合には、市販のアダプターを買われればよいと思います」
「電源はどうですか」
「1時間程で充電できます。100枚は撮影できると思いますが、M8はバッテリーが大きくて撮影できる時間がかなり少なかったと思います」
「写真の色合いの方はどうですか」
「こちらにM9で撮影した写真がありますが、銀板写真とは少し違います」
「そうですね、落ち着いた緑という感じではなくて、明るい緑ですね。ホームページをしていて、多数写真を掲載しているのですが、デジタルの方がやりやすいかなと思って。ちょっと私のHPを見ていただけますか」
「もちろん...ほう、いいですね」
「京都のお寺の写真だけでなく、槍・穂高岳の写真もあります。もしM9が買えたら、好きなだけ撮影ができるから、HPに掲載できる写真が増えるんじゃないかと思っているんです。今日は知りたいことがすべてわかりました。またお邪魔するかもしれません」
「どうぞ。お待ちしています」